言葉と言葉をぶつけよう|すべての書く人を応援する広告コピー研究所 #02

みなさん、こんにちは!

「すべての書く人を応援する広告コピー研究所」新人研究員のモリシタです。

前回「胸に刺さる一行を書こう」という研究レポートで、“すべての人は「胸に刺さる一行」を読みたがっている”という発見をご紹介しました。さらに、その「胸に刺さる一行」を書くためには、世の中にあるお手本から「法則」を抽出し、蓄積していくことが大切だと。

この連載では、その「法則」を分析し発表していきたいと思っています!

それでは早速。今回の「法則」はこちらです。


(「にごしょうとつ」と読みます)

この法則についてご説明する前に、まずはこの法則を使ったコピーをご覧ください。どんな法則か、皆さんはわかりますか?

こちらのキャッチコピーは、一体どのようなことを伝えたいのでしょうか。

おそらく、まだよくわからないですよね。

この後に続く文章(ボディコピー)はこうなっています。

英語は、これからの農具だ。

賛否あれど、TPPは始まる。

農業は世界で稼ぐ時代へ。

チャンスかピンチか。

未来を耕すのは、きっと英語です。

秋田で英語!M’s英会話

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が世の中で話題だったころ、秋田県にある英会話教室が出した広告です。農家の方々を奮い立たせるような力強いコピーワークが印象的ですよね(また、農家の方々だけでなく、一般の人に向けられたコピーであるとも思えてきます)。

文章に“インパクト”が宿り、気になって後の文章を読みたくなってしまう。

これが「二語衝突の法則」です。

例えばこのコピーが、

「英語は、これからの武器だ。」

となると、インパクトはありません。

ふだん「英語」と結びつくことのない「農具」という単語を使ったことで、インパクトが生まれています。

この法則が使用されている他のコピーも見てみましょう。


(トンボ)

このコピーにも「なんだろう?」と思わせるような違和感がありますよね(今は亡くなられている、岩崎俊一さんという方が書かれたコピーです)。

もしお時間がある方は、続きがありますのでせひ見てみてください。言葉の節から誠実さと温かさがにじみ出る岩崎さんのコピーは、私が大好きな文章の一つです。

「ロケットも、文房具から生まれた。」全文

このコピーがもし、

「設計図も、文房具から生まれた。」

だとしたら、当たり前に聞こえます。できるだけ単語同士の距離を遠ざけることで、文章にインパンクトを出すことが大切なのです。


(単語同士の距離が遠いほどインパクトが生まれる)

他にもまだまだ、「二語衝突の法則」を使用したコピーがあります。

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ゴルフは、物理だ。(PRGR)

ムラタは思う。恋は、なにより科学です。(村田製作所)

想像力と数百円(新潮文庫)

諸君。学校を出たら、勉強しよう。(日本経済新聞)

生きる、お葬式。(日本セレモニー典礼会館)

オジサンだって女子だもん。(三井不動産)

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ここまで来て、皆さんはもうお気づきかもしれません。

この法則は「Web記事のタイトル」と非常に相性がいいんです。

キャッチコピーで目を引き、文章を読ませるという技術は、ずっと昔から新聞や雑誌広告に使われています。しかもWebとは違い、紙媒体は文字数が限られてしまうので、より端的にわかりやすくメッセージを伝える工夫がたくさん凝縮されています。

もしどこかで広告を見る機会がありましたら、研究してみるのもいいかもしれません。

閑話休題「パワーワード」

ネット上でよく見かける言葉に「パワーワード」というものがあります。これも「インパクトのある言葉」を指し「二語衝突の法則」が使われていることが多いです。

ちなみに「パワーワード」と検索して、ざっと眺めて出てきたものには以下のようなものがありました。

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成人済みJK

推しの過剰摂取

遺伝子の楽園

円卓好き殺す布

広告アウシュビッツ

アムロとり紙

職質ガチャ

置き無慈悲 などなど…

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意味はよくわかりませんが、おもしろそうな臭いがしますよね(笑)

SNSはパワーワードの宝庫です。アンテナを張り巡らし、タイムラインを観測する習慣をつけると言葉への感度が鍛えられていくと思います。

Web記事のタイトルに応用するために

さて先ほど、「二語衝突の法則」は記事のタイトルと相性がいいと述べました。しかし、雑誌や新聞などの紙媒体と比べて、Webの記事では気をつけなければいけないポイントがあります。

それは「クリックさせる」ということです。

タイトルで引き付け、それに続く文章を読ませるという構造は紙媒体と一緒ですが、無料であることが多いWeb記事は「元々記事に興味がなく受動的な態度である人」に、興味を持たせアクションを起こしてもらうというハードルが発生します。

また、昨今のインターネット上の情報量は、この10年で数10倍、数100倍に増えていると言われています。

情報の濁流が、轟々と音を立てて勢いよく私たちの目の前に流れていることを想像してみてください。

その流れの中から、ターゲットにたった一つの記事やコンテンツに手を差し伸べてすくってもらわなければいけません。しかも今後、5Gが世の中に広まれば、情報の総量はさらに増大し、川の流れはより大きく勢いよくなっていくことが予想されます。

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※5G(第五世代移動通信システム)とは…第四世代移動通信システム(4G)の通信速度をより高めた次世代の移動通信システムのこと。LTEの約1000倍という高速大容量の通信速度と、IoTおよびMtoM端末の急激な増加に対応するため、さらなる通信の多重化と低遅延化、セルの高密度化を図る。日本では平成29年(2017)に実証実験を開始、2020年の実用化を目指している(コトバンク「第5世代移動通信方式」より引用)。
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そのためには、前述のパワーパードのように「なんだかおもしろそう」だけではなく、受け手に「自分にも関係あるかも」と思わせなければいけません。しかも、ほんの数秒、もしくはゼロコンマ数秒の間に。

「なんだろう?」という違和感や好奇心の喚起と、「私に関係あるかも!」という課題解決などの価値の提供。その二つの要素がバランスよく組み合わさっていることがタイトルをつける上で重要になってくるのです。

「組み合わせ」を探しに行こう

では、インパクトを生み出すための言葉の組み合わせは、どうやって探したらいいのか?

私が考えうるものをご紹介します!

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①組み合わせる言葉と正反対のものを探す

諸君。学校を出たら勉強しよう。

生きる、お葬式。

オジサンだって女子だもん。 など

②組み合わせる言葉と裾野ちがいのものを探す

英語は、これからの農具だ。

ゴルフは、物理だ。

想像力数百円 など

③言葉の延長線上で一番遠いものを探す(最上級 or 最下級の表現)

ロケットも、文房具から生まれた。
(「文房具で生めるもの」の最上級)

〇〇過激派、〇〇信者
(「好き」の最上級) など

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例えばこの法則を応用し恋愛系の記事を書く場合、科学、政治経済、ビジネス界隈にある単語を探し組み合わせると、インパクトのある表現が見つかるかもしれません。

常識の柵を壊して、違った裾野を徘徊してみると思わぬ鉱脈が見つかったりするのです。なかなかいい文章を思いつかないときは、気分転換に全く関係のないコンテンツを見てみるといいかもしれませんね。

塩素系の薬品を混ぜると危険ですが、言葉はどんどん混ぜてみてください。きっと面白い発見が生まれるかもしれません。

(一応この連載は「化学ネタ」を要所で入れていくスタンスです。自分でもたまに忘れます)

書くことは、祈りに近い

最後に、私がコピーや記事を書くときに心に留めていることをお話しします。

それは、言葉も文章も広告も、すぐに消費され忘れられていくということ何かを「書く」とき、それを前提にペンを取らなければいけないと思っています。広告コピーの場合それはとても顕著で、むしろ「見たくもない」と感じる人も多いのではないでしょうか?

“言葉にできることは、たかが知れている”

そのことを意識していた方が、書いてる側としてはあまり疲れません。期待しなくていいから気持ちが楽になったりします。

だって、言葉がすごい力を持っていたらいま戦争なんて起こってないです。新聞の一面には、もっといいニュースがたくさん並んでいるはずです。

いや、でも。自分で言っといて、なのですが。

そんなことばかり考えていたら、なんだかロボットみたいですよね。

「言葉ハ、諸行無常、盛者必衰のウンタラカンタラ…」「書ケレバイイ」「納品デキレバイイ」って。

ん、あれ、そんなに達観してて楽しいんだっけ?そんな気持ちで誰かに読んで欲しいと思うんだっけ?

いいや、違いますよね。

「書く人」はロボットみたいになってはいけない。

だから私は意地でも祈り続けていたいんです。ちょっとでもいいから目に留めてほしいと。通りすがりのだれかに届いてほしいと。できればこの文章で、何かが変わることを信じて。できるだけ。

「誰にも届かないんじゃないか」と知っているからこそ、「届いて欲しい」という強い意志が生まれるのではないでしょうか。そんな風に強い意志を持って書いた文章の方が、誰かに届くのではないでしょうか。

それでも、書いたって届かないことの方が多いから。
だから書くことはきっと、祈りに近い。

あなたは、どんな「思い」を持って書いていますか?
「誰かの心を、言葉で少しでも動かしたい」

「胸に刺さる一行」を生み出せるのはいつも、そう信じている人だけだと私は思うのです。