言葉に助走をつけよう|すべての書く人を応援する広告コピー研究所 #04

みなさん、こんにちは!

「すべての書く人を応援する広告コピー研究所」新人研究員のモリシタです。

誰かの「胸に刺さる一行」を書くために、世の中にあるお手本から「法則」を抽出し分析していく連載の第4回目!私が見つけた「法則」を引き続き発表していきます。

それでは早速参りましょう。今回はこちらです。

「対の法則(ついのほうそく)」です。

この法則が使われたコピーはこちら。皆さんはどんな法則かを抽出し説明できますか?

※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2012)『コピー年鑑2012』宣伝会議

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ピアノじゃ食べていけないけど
ピアノがあれば生きていける。

(あんどうピアノ教室)

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似た構造の文章が二つ並んでいますね。さあ、答え合わせです。

この法則を使ったコピーは、例えるなら「二段ロケット」。一句目で助走をつけ、二句目でさらに勢いをつけ遠くへ飛ぶ。言葉の加速装置のようなものです。

そして、この一文は考え方も二段構成。まさに「二段ロケット」です。

ではどうやったら書けるのか。これからその構造を紐解いていきたいと思います。それができたら、この法則を使って伝えたい人のところまで、言葉を届けにいきましょう。

まず「なにを贈るか」

文章やコピーを書く上で、最初に必ず考えるのは「なにを言うか」プレゼントに例えるなら、「なにを贈るか」です。

先ほどのコピーの「なに」は、後ろの句の「ピアノがあれば生きていける。」でした。

でもこれだけでは、まだ印象に残るコピーにはなっていません。「胸に刺さる一行」を書くためには、二段目の仕上げが肝になってきます。

ちなみに、「いいコピー」の定義には大きく二種類あると私は考えています(「いい」の定義には、他にも様々な観点があるかと思いますが、その中の一つの定義として聞いていただければと思います)。

今回の場合はBの「どう言うか」に焦点を当てています。

例えば「アマゾン奥地の遺跡から採ってきた虹色の石」だとしたら、もらうだけでびっくりします(よろこんでくれるかどうかはわかりませんが)。

一方、「マフラー」のようなありふれたものでも、手作りやサプライズで渡されると嬉しいですよね。

AとBが両方組み合わさったコピーもありますが、大きくこの二つに分類されるのではないかと思っています。

例えばAの「何を贈るか」の場合、このようなコピーが例に挙げられます。

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オオカミを殺した人間は、
シカも殺さなければならなくなった。

(日本オオカミ協会)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2014)『コピー年鑑2014』宣伝会議

驚きのある意外な「事実」をまっすぐに伝えていますよね。このようなコピーについてはまた次回以降で紹介したいと思います。

今回は「なにを言うか」かではなくの「どう言うか」を考えていきます。

贈り物にリボンをかけるように

「どう言うか」は「サプライズプレゼントを考えること」と似ていると私は思います。

どんな包装をしよう。ピンクのリボンをかけようか。ブルーの包装紙で包もうか。夜景を見ながら渡そうか。ドッキリを仕掛けようか。

その方法の一つが「対の法則」です。「どう書くか」はそんな風に誰かをよろこばせたり、驚かせたりするために頭を悩ませることなんです。

先に挙げたコピー、

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ピアノじゃ食べていけないけど
ピアノがあれば生きていける。

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これは「ピアノじゃ食べていけないけど」という土台があることで、「生けていける」が強い推進力を持つようになります。

プレゼントを決めたら終わり。ではなく、相手のよろこんでくれる顔を想像しながら渡し方を考える。文章で言えば、この文章でいいだろうか、余計なものは入っていないか、少し付け足すと色っぽくなるんじゃないか。

そんな、届けたい人を思い至れる想像力が、文章の細部に現れてくるのだと思います。

どんなプレゼントか(何を言いたいか)が決まったら、どうやって渡そうか(どう言うか)をたくさん想像してみてください。その時間が、ただの「物」を忘れられない「贈り物」にするのですから。

良いコピーを書ける人はとにかく粘ります。しつこい。

伝えたいことは同じなんです。でも、もっと驚かせられないか。印象深いモノにできないか。他に言い方はないだろうか。表記は「人」が良いのか、「ヒト」が良いのか、「人間」が良いのか。提出した後も、差し替えを求めるということがあるほどです。

他人から見たら「どっちでもいいじゃん」と思うことも、こだわり続ける。それは書く人に限らず、何かを「つくる人」にとっても大切な姿勢です。その一回一回の小さな積み重ねが、いつか大きな信頼に変わっていくと、私は信じています。

実践!

では、実際にこの法則を使ってどのようにして書くかを整理してみました。

例えば一句目に「なにを言うか」を考えたら、二句目に反対の単語が来るコピーは以下のようなものがあります。

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①反対カテゴリー

ピアノじゃ食べていけないけど
ピアノがあれば生きていける。

「残りもの」は嫌い。
「最後のひとつ」は好き。

(そごう・西武)

外国を知らない日本人より、
日本を知らない日本人の方がハズカシイ。

(御菓子司亀谷)

愛は目に見えないけど、
愛着は目に見える。

(セメダイン)

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一方、同類のコピーはこちらです。

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②同類カテゴリー

知名度だけが一流の会社より、
知名度だけが二流の会社で働きたい。

(リクルート)

英語は、いろんな国で使える。
暗算は、すべての国で使える。
(今村総合学園)

主婦になると値段が気になる。
母親になると産地が気になる。

(風来桜)

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というように書き方を分類してみました。

皆さんもぜひ、いろんな言葉で試してみてください。

想像力で物語をつむぐ

昔、先輩に教わった印象深い教えがあります。

「いい文章を書ける人は、『やさしい想像力』を持っている」

相手が読みやすいかどうか。漢字の方がいいか、カタカナの方がいいか。これをみたらどう思うか。どんな気持ちになってくれるだろうか。そこまで思いやれる人がいい文章を書けると。

どこまで思い至れるか。これはコミュニケーション全般に言えることですよね。

そしてもう一つあります。

「世の中の良いコンテンツには、『ストーリーがある』」ということ。

それはたった一行のコピーでも同じです。

今回で言うと、それは「オチをつける」ということになります。そのために「伏線」をはり、「何がくるんだろう」と期待させうれしい裏切りを演出する。どんなコピーを書くときにも、ストーリーを意識することでより伝わるものになるかもしれません。

まるでロケットの機体が助走をつけて遠くに飛ぶように、一行の中にも「期待の助走」をつけていくことが大切です(「機体」と「期待」うまく掛けることができ自分で少しびっくりしています)。

やさしい想像力とストーリーテリング。

その二つを使って、遠い遠い誰かの星まで飛んでいきたいものです。

さて、今回の「対の法則」は、数あるレトリックの一つとして紹介しました。言いたいテーマが決まったら想像力を粘り強く駆使し、物語を意識しながら「どう贈るかを」考える。

それは「贈り物語」とでも言いましょうか。世界中にある物語では語られていない、あなただけの「贈り物語」を聞かせてください。