真実を伝えよう|すべての書く人を応援する広告コピー研究所 #05

みなさん、こんにちは!

「すべての書く人を応援する広告コピー研究所」新人研究員のモリシタです。誰かの「胸に刺さる一行」を書くために、世の中にあるお手本から「法則」を抽出し分析していく連載の第5回目! 私が見つけた「法則」を引き続き発表していきます。

それでは早速参りましょう! 今回はこちらです。

「真実の法則」です。

この法則が使われたコピーはこちら。皆さんはどんな法則かを抽出し説明できますか?

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ケーキは3時に食べるのが、
実はいちばん太りにくい。

(アトレ)
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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2017)『コピー年鑑2017』宣伝会議

この事実、ちょっと意外だと思いませんでしたか? それでは答え合わせです。

事実は小説より奇なり。

レトリックを使い伝えたいことに表現していくのもいいですが、そのままの事実を伝えるだけで発見や驚きがある場合があります。

このコピーには、「3時のおやつ」という誰もが知っているフレーズを逆手にとり「いちばん太りにくい」という事実を教えてくれています。

ちなみに、コピーは以下のように続きます。

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ある代謝の研究によると、脂質の吸収が

最も抑えられるのは、午後3時なのだとか。

甘いものは別腹でも、下腹は出したくないもの。

たまには早く帰って自分にご褒美を。

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朗報です。3時のおやつはベストな選択だったのですね。

このように「真実の法則」を使ったコピーは、世の中にかなり多く存在します。ミソは「新しい発見」がちゃんとあることです。

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ドイツには、殺処分という言葉すらない。
(ONE MORE)

落書きをやめると、成績は下がる。
(ショウワノート)

巣鴨に住んでいる高齢者の割合は、
全国平均よりも低い。

歌舞伎町で、
歌舞伎が開かれた歴史は、ありません。

(東京都)

人は、足下の蚊にも気がつかない。
蚊は、50m離れた人にも気づく。

黒髪にスーツ。
日本人は、蚊が寄りつく色で仕事をしている。

(フマキラー)

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良いコピーを書くには、よく文章力や発想力が必要だと思われることが多いのですが、実はその限りではありません。上記のコピーのように、「意外な事実」を発見することで「胸に刺さる一行」を書くことができます。

つまり、粘り強く「調べる」ことが、良いコピーを書くことへの第一歩なのです。

料理しておいしさを引き出す

意外な情報はそのままでもインパクトがあるのですが、欲を言えば、より相手に伝わるように「情報を料理する」ことが必要になる場合があります。

料理の仕方は大きくこの二つです。<①わかりやすく例える>の事例はこちら。

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母乳を与える。それだけで、
ラグビー1試合分の体力を消耗してしまう。
(Madre Bonita)

同性を好きになる人は、
じつは左利きの人と同じくらいいる。
(日本セクシャルマイノリティ協会)

くしゃみの飛距離は
7人がけの座席より長い。
(キリン プラズマ乳酸菌)

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そしてこちらが<②具体的な数字>の事例です。

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絶滅速度:毎時4.6種
(DENTSU ECO PROGRAM)

憲法改正。ドイツ59回、日本0回。
戦後から同じ時間が過ぎている。

20代の投票率、約35%。60代の投票率、約75%。
あなたが政治家なら、どの世代に向けて政策を練るだろう。

(読売新聞)

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情報は生の状態でもインパクトがある場合がありますが、どのコピーにも共通して言えることは、根本に「伝えたい相手にどう受け取ってほしいか」という意志があることです。

商品を買って欲しいのか。意識を変えたいのか。考えるきっかけをつくりたいのかなど、具体的にどんなアクションを起こしてもらいたいかという「ねらい」がベースにしっかりなければいけません。その目的に応じて相手にとっておいしい(はたまた激マズな? )味を加えていきましょう。

真実はいつもひとつ?

人気推理漫画「名探偵コ○ン」に「真実はいつも一つ! 」という有名な決めゼリフがあります。果たしてこれは本当でしょうか?

コ○ンを否定するようですが、私が思うに真実はいつも一つではありません。見方を変えれば、真実は人によって違った受け取り方をされるからです。

例えばとある大きな病気にかかったとき、「生存率95%」「死亡率5%」と伝えられるのは、内容は同じですが受け取るイメージが違ってこないでしょうか?前者のほうが、安心感があると感じるはずです。

このように、事実の見せ方は、狙った効果をより最大できる方法を検証し探してみることをオススメします。

また別の例を挙げてみます。

webのダイレクトメールや広告バナーなど、コンバージョン(購買や資料請求などの達成したい最終成果)に直接結びつきやすい媒体のコピーでは、「できる限り具体的な情報を示す」ことが良いとされています。例えば、

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「1万人」より「10817人」

「9割の人が支持した」より「92%の人が支持した」

「2000個が完売した」より「5時間で2000個が完売した」

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などです。

「数字」というものはときに残酷なまでに境界線を規定してしまう「ものさし」なので、うまく使いこなしたい道具です。

事実を受け止める姿勢

コピーの話というより、企業の理念や姿勢の考え方になるのですが、あえて自社の「ネガティブな事実」をさらけ出すことで、誠実な姿勢を示す事例があります。

1991年に、ウェーデンの自動車メーカー・ボルボが出し話題になった新聞広告のコピーです。

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私たちの製品は、公害と、騒音と、
廃棄物を生みだしています。

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(1991)『コピー年鑑1991』宣伝会議

次に続く文章では、環境に悪い自動車という製品を製造しているからこそ、より一層環境に配慮した自動車づくりに努めている。という旨の文章が続きます。

このコピーは決して企業にとって都合のいい事実ではありません。しかし巧みなのは、単に企業にとって都合の悪い事実だけを伝えるのではなく、それゆえに並々ならぬ環境保全への意識を持っている、という信頼獲得へのメッセージに結びつけているところです。

自社にとってのネガティブな真実を伝え、真摯な姿勢を見せることで企業や団体のイメージをアップさせる「真実の法則」の一例でした。

発信者の特権

ライターやコピーライター、広報やメディアに関わる仕事をしている人には「発信者」としての自覚と責任が必ず伴います。

2016年に、某IT企業が運営するweb記事のまとめサイトで、事実が不正確な医療記事や著作権無視の転用が次々と見つかり、サイトが休止に追い込まるという事件が起こりました。この出来事は、web記事とネット広告の問題点を表出させ、業界に衝撃を与えました。そのため、誰もが発信できる現在の環境で、発信者は以前にも増してリテラシーが求められています。

そのような「伝え方」に関して、元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤さんがおっしゃっていた印象深い言葉があります。

「大きな主語を使わない」

例えば、日本人、福島、被災地、大人、子どもなど。大きな主語で物を言うことでいい思いをしない人が必ずいます。私は世代的にいわゆる「ゆとり世代」なのですが、「ゆとりは〇〇だ」と言われるとムムム…と眉間にシワ寄がよりますもの。

しかし、広告コピーでは、大人、子ども、男、女、という単語が非常に多く使われます。単純にそれを使わないほうがいいということではありませんが、大きな主語を使用するときには気をつけなければいけないと思っています。特に昨今では「男は…」「女は…」と断定的に使われる文脈は、確固たる狙いや意志がなければ安易に使用しない方がいいのではないでしょうか。

真実は毒にも薬にもなるのです。

私が広告コピーを書いていて特に大切にしたいのは、発信することで「一人でも不幸になる人がいてはいけない」ということです。その判断基準は、常に持っておくべき大切な指針にしています。

さて、こうしていろんなことを考えてみると、「発信するのが怖い」と思われるかもしれません。ですが、責任と自覚を持って発信できる人には、その怖さを知った上で発信をし続けて欲しい。

「常識」や「真実」というのはとても怖い言葉な気がしています。常識は、見方を変えると「常識だと思い込んでいるもの」以外を世界から排除してしまう残酷な考え方なのかも、と。

そう、世の中にはいろんな真実があってそれは一つじゃないんです。だから、声を届けて欲しいんです。

まだ世の中で知られていない真実に光を当てて、常識を壊すことで誰かにちょっとでも幸せになってもらう。それが、私たち「伝える人」だけが持つ特権だからです。