流行をとらえよう|すべての書く人を応援する広告コピー研究所 #06

みなさん、こんにちは!

「すべての書く人を応援する広告コピー研究所」新人研究員のモリシタです。

誰かの「胸に刺さる一行」を書くために、世の中にあるお手本から「法則」を抽出し分析していく連載の第6回目!今回も「法則」を発表していきます。

さて、今回はその法則が使われたコピーから2つ紹介していきます。皆さんは共通点を抽出し、どんな法則かを説明できますか?

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奥さま、消費税は8%ですが
こちらは0%ですよ。

(野村證券/NISA)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2014)『コピー年鑑2014』宣伝会議

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本音でつぶやいても炎上しない。

(坊ちゃん文学大賞)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2017)『コピー年鑑2017』宣伝会議

今回はこの二つのコピー。ヒントはどんな背景があって書かれたかです。もう分かりますよね?

では答え合わせです。

「トレンドの法則」です。この法則では大きく2つの方向性を定義しています。一つ目が「話題に乗る」。もう一つが「話題にあがる」です。一つずつ紹介していきます。

話題に乗るコピー

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ハンカチ以来パッとしないわね、早稲田さん。
ビリギャルって言葉がお似合いよ、慶応さん。

(慶應義塾大学應援指導部、早稲田大学応援部)

不倫とか、熟年離婚とか、
大人が若者に、
結婚するなと言ってるみたいだ。

(映画『恋妻家宮本』)

みんな、地上の耐震ばかり気にしている。
(積水化学工業)

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また言葉のみではなく、ビジュアルとコピーの両方の表現で「トレンドの法則」を使い表現している印象的な広告もあります。

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言わせとけ。

(サントリー/氷結)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2017)『コピー年鑑2017』宣伝会議

SMAPの解散騒動の直後に広告に起用された元メンバーの中居正広さん。その胸中をあたかも表しているかのようなキレのあるコピーが話題になりました。

このような「トレンドに乗っかる」コピーや記事は、鮮度が高いほどネットで拡散されやすい切り口の一つです。そのため世の中の実感をすぐに捉えられるよう、トレンドを抑えるというのは基本になります。

さて、この後は今までの逆。「話題に乗る」ではなく「話題にあがる」コピーを見ていきましょう。

話題にあがるコピー

先月、サッカーW杯ロシア大会が終わりましたね。その際に今年2018年の流行語大賞筆頭株のワードが誕生しました。もう皆さんもご存知。

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大迫半端ないって

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念のため解説しておくと、上の言葉はサッカー日本代表のフォワード・大迫勇也選手が高校時代に出場した全国大会で対戦した相手チームの選手が言い放ったものでした。その言葉がおよそ10年前にネットで話題になり、今大会を通じて再び脚光を浴びました。

ここで何が言いたいかと言うと、上記の言葉はみんなが「言いたくなる」フレームでできていたため応用性が高く、爆発的に広がったということです。

ニュース記事に多数引用され、「大迫 人間性も半端ない」「後輩も恩師もテンション半端ない」と見出しが出ることにとどまらず、ネットではもはや何にでも「〇〇半端ないって」という賞賛の言葉があふれかえりました。

話題に上るような「言いたくなる」言葉をつくるのも、書く人の醍醐味です。私もいつかそんな言葉を生み出せたらいいなぁと切に思います。過去には以下のような同様の事例がありました。

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今でしょ。
(ナガセ/東進ハイスクール)

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おなじみ林修先生の名台詞。「いつやるか」の振りがあると必ず言いたくなります。

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日本よ、これが映画だ。
(映画『アベンジャーズ』)

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日本映画を煽るような上から目線のコピー。この一行にイラっときた人がネット声をあげた結果、火がつき話題になりました。その後このフレーズをパロディにした「ハリウッドよ、これが日本映画だ。」や、野球界でも「日本よ、これが中日だ。」などのコピーが生まれるなど、至るところで「〇〇よ、これが〇〇だ。」のフレームが使われました。

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ぜんぶ雪のせいだ。

(JR SKISKI)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2014)『コピー年鑑2014』宣伝会議

2014年に首都圏をはじめ太平洋側を中心に大雪が襲来。首都圏の交通網が麻痺し、職場やイベント会場から移動できない帰宅難民が駅に貼ってあった「JR SKISKI」のポスターを見てSNSに投稿したのがきっかけで拡散しました。

何につけても「ぜんぶ雪のせいだ」と発信する人が大量に発生。ネット上でブームが巻き起こりました。たまたま大寒波が来たので偶然の産物なのですが、発したくなるようなシンプルな構造のフレームだったと思います。

以上で紹介したように、「流行になる言葉」は偶然のたまものかもしれません。しかし、偶然を少しでも必然にするために、口の端に登りやすい言葉を追求していくことはできるのかもしれません。

広がりやすい言葉のデザイン

生活者が言いたくなる言葉に近づけるため、フレームをデザインすることは可能です。その事例を観察していきましょう。

例に挙げるのは、2017年に始まった日清カップヌードルが若者に向けたブランドコミュニケーション「HUNGRY DAYS」で使われた「アオハルかよ。」というコピー。『魔女の宅急便』『アルプスの少女ハイジ』などがリメイクされたCMは見たことのある人が多いのではないでしょうか。

※画像は日清公式Twitterより引用

制作者の方からなぜこのようなコピーになったのかを実際にお聞きする機会がありました。それはこんな考え方からでした。

このように、恥ずかしさを和らげ学生に親しまれやすい言葉を設計したことで、実際に学生たちがSNSで「アオハルかよ。」を発信したり、文化祭のポスターに使用したそうです。つまり狙い通り。流行させたいコピーがあるときは、その人が「言ってくれそうな言葉」をイメージし言葉を選んでいくのが大切なんですね。

ちなみに小ネタなのですが、このような言葉を設計するときは「短くする」「英文字を使用しない」のがセオリーです。これは検索してもらいたいサービス名や商品名をつくる際ににも当てはまるかと思います。

コピーライターへの試練と追い風

今「短く書くこと」が以前より求められているように感じます。

その理由は、SNSを中心とした現代のスピード感の早いコミュニケーション環境と、現代の若者ほど長文が読めなくなっていることが挙げられます。2015年にアメリカ・マイクロソフトの研究チームが「現代人の集中力は8秒以下」という調査データを発表しました。なんとこれは金魚以下の短さだそうです。

Twitterで使われる言葉、読まれる文章がどんどん短縮化されており、上限140文字でも読まれにくくなくなっているそうです。驚いたのは、一部の高校生の間では「了解!」が「り!」と短くされやりとりが行われているということ。衝撃ですよね。

そのため、いかに短い文章で「読んでもらうか」。さらにはSNSで「拡散されるか」という需要が非常に高まってきています。それに応えるためには、実際にSNSを利用し流行っている言葉や文脈を捉え実践していく必要があるかと思います。

SNSでの文章は、サービスによって相性の良い文脈が異なるため、それぞれによって使い分けるのが吉。Twitterでは自虐などネガティブ発言や小ネタが多い、Facebookは仕事のつながりがある人も多く比較的フォーマルな場であるなど、それぞれの傾向は全く異なります。

電通のコピーライターである橋口幸生さんの著書『100万回シェアされるコピー』では、ネットで広がりやすい言葉がこれでもかというくらい分析されていて、読んでいて非常に勉強になります。シェアされる法則を大きく①本音②驚き③共感④反感に分け紹介していますので、ぜひ皆さんもお手に取ってみてはいかがでしょう。

新しいコピーライターの時代がやってくる

さて、ここまで「流行をとらえよう」という話を展開してきました。最後に私自身が実感するWebの言葉に関する今の実態をお伝えできればと思います。

現在、ネットへ主戦場がシフトしていく昨今のマーケットの中で「短い文章で伝える」「共感を生む」というスキルが非常に価値の高いものになっていることは前述でもお話ししました。ということは、コピーライターの力がより活かせる場が広がるということに違いありません。

私は趣味が高じて、上場している日本企業約4000社のWebサイトを見て、企業スローガンを収集しリスト化することを半年前くらいから始めました。

少しずつやっているのでまだ4分の1くらいしか進んでませんが…。最初は空いてる時間になんとなく取り組んでいましたが、作業を進めていくと企業のWebサイトや言葉について様々な気づきが得られてきました。

驚いたのは、想像以上に多くの企業のサイトがユーザーにとって使いやすい設計がされておらず最適化されていないということ。何をしている企業かわかりにくい、そもそもスマホのブラウザに対応しておらず文字が小さくて見えづらい、デザインがひと昔前のテンプレ etc…

今やスマホでネットにすぐにアクセスでき検索できる我々にとって、気になって訪れた企業やサービスの玄関や顔となるウェブサイトがお粗末なことになっているのは、とてももったいないことです。

TOPページに訪れても何の企業かわからなかったり、ちょっとでも(言葉は悪いですが)ダサかったりすると、ユーザーは感覚的にすぐにサイトから離れてしまいます。

そこで、「短く書ける人」の出番です。短い時間で、短文でわかりやすく伝える、惹きつける、共感させるというコピーライターのスキルがいま存分に発揮できる時代が到来しています。

コピーライターの仕事がなくなってきている、とおっしゃる方もいらっしゃいますが、私はむしろ逆だと思っています。コピーを書く力を借りたくて困っている人はそこら中にいます。

コピーライターの時代はもう終わり?

いいえ、旗を立てましょう。波に乗りましょう。また違った形で戦えます。私たちの新しい時代が、今始まろうとしています。