言葉を奏でよう|すべての書く人を応援する広告コピー研究所 #07

みなさん、こんにちは!

「すべての書く人を応援する広告コピー研究所」新人研究員のモリシタです。

誰かの「胸に刺さる一行」を書くために、世の中にあるお手本から「法則」を抽出し分析していく連載の第7回目!実戦で使えそうな「法則」を引き続き発表していきます。

さて、早速コピーの紹介です。皆さんは共通点を抽出し、どんな法則かを説明できますか?

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あした、なに着て生きていく?
(earth music&ecology)

目のつけどころが、シャープでしょ。
(SHARP)

100人乗っても大丈夫。
(イナバ物置)

一目で義理とわかるチョコ。
(有楽製菓/ブラックサンダー)

やがて、いのちに変わるもの。
(ミツカン)

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ヒントは「音」。全部続けて音読してみるとわかるかもしれません。もうわかりましたか?

それでは答え合わせです。

コピーを書くうえで「音」はとても重要な要素です。同じ内容のコピーでも、ゴロが悪いだけで伝わる深度が浅くなり、印象に残らないものになってしまう可能性があります。

そこで基準になるのが「七・五調」です。

多くの名作コピーと言われる作品は、音にも工夫が施されています。この法則はキャッチコピーだけではなく記事などの長い文章でも、意識することで歯切れの良い読みやすいものになります。最初から七音、五音の数を意識することはないですが、書いたら口に出して読んでみて、気持ちの良い音になっているかどうか確かめてみてください。

多くのコピーライターがコピーを書く際にも、少しでもゴロが悪いと語尾を調整するなど音の気持ち良さを最後まで追求する姿勢を持っているはずです。

世の中には「七」と「五」音の組み合わせのコピーがたくさんあります。

こちらも七・五調。

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大人はとっても、長いから。

(JR東日本「大人の休日倶楽部」)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2006)『コピー年鑑2006』宣伝会議

こちらは七・五・七・五調。

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星の数ほど人がいて、
今夜あなたと飲んでいる。

(サントリー/響)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2006)『コピー年鑑2006』宣伝会議

いかがでしょう?内容もさることながら、リズミカルでスッと入ってきて印象に残るコピーではないでしょうか。

「クリエイティブ音」と「アイドル音」

「音」について、クリエイティブディレクターの箭内道彦さんが興味深い話をされていたので紹介します。

日本語は「クリエイティブ音」と「アイドル音」の二つに分けられるというものです。

「クリエティブ音」は脳を刺激する音で、「か行」「さ行」「た行」「ら行」に加え、濁音、「ー(音引き)」、「っ」、「同じ音の連続」だそうです。

雑誌で例を挙げて言うなれば、『BRUTUS』『東京カレンダー』『プレジデント』『暮らしの手帖』『ザ・テレビジョン』『LDK』などは「クリエイティブ音」でほぼ構成されています。

「アイドル音」とはやさしい気持ちになる癒される音。「クリエイティブ音」以外の音で代表的なのは「ま行」「や行」です。そのためグラビアイドルの名前は「みほ」や「もえ」など「アイドル音」で形成されていることが多いんです。

ちなみに「あ行」は上記二つの中間に位置するそうです。

コピーやネーミングを考えるときにぜひ参考にしてみてください!

ちなみに今回記事を書くにあたりいろんな「クリエイティブ音」の単語を探していましたが、個人的にお気に入りなのは「オードリー・ヘップバーン」。

「オードリー」で溜めて「ヘップ」で踏み込んで「バーン」で飛び出す感じがすごくいいです。

言葉で言葉以上の表現をする文章

言葉で音や声を表す秀逸で変わったコピーがあります。ファーストフード店マクドナルドの人気商品「ベーコンポテトパイ」のコピーです。

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へーホンホヘホハイ

(Mac Donald)

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※画像はマクドナルド公式Twitterより引用

ご覧の通り、ベーコンポテトパイの「アツアツ」な様子をなんとネーミングで表現しています。さらにマクドナルドは、実際に商品名としてパッケージに印刷するなどしたため話題になり、店頭で「へーホンホヘホハイ」を注文するお客さんが増えたそうです。

このように、音を使って人の様子を表す文章が、歌人・穂村弘さんの短歌にもありました。

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体温計くわえて窓に額つけ
「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

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窓の外を見ると雪が降ってきたので「雪だ」と言おうとしたが、体温計をくわえていたため「ゆひら」と言ってしまった人の様子を、五・七・五・七・七の短歌に閉じ込めている表現です。

このように、言葉で音や声を表現する際に、その言葉以上に情景を伝える表現が存在します。言葉の可能性を感じますよね。まだまだできることを探ってみたいものです。

元祖「音メディア」のテレビCM

もともとテレビCMは、例えば夕飯の支度をするために台所にいて映像が見えなくても、音で何を伝えたいかがわかるような設計がされていました。さらに、15秒や30秒という短い尺の中でいかに印象に残る表現を込めるか。そう考えたときに「音」の役割は重要でした。

その課題を解決するために登場したのが「サウンドロゴ」です。

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セブンイレブンいい気分
(セブンイレブン)

あなたと、コンビニ。ファミリーマート
(Family Mart)

それ、野村に聞いてみよう。
(野村證券)

本を売るなら BOOKOFF
(BOOKOFF)

やめられないとまらない、カルビーかっぱえびせん
(カルビーかっぱえびせん)

すぐおいしい、すごくおいしい
(日清チキンラーメン)

ココロも満タンに
(コスモ石油)

いいことあるぞ〜、ミスタードーナッツ
(ミスタードーナッツ)

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以上のようなサウンドロゴは誰しもが耳にしたことがあるのではないでしょうか。

このようにブランド名やメッセージを見た人の記憶に植え付けるだけではなく、再現性があるため思わず口ずさんでしまうのも「音」や「リズム」効果です。サウンドロゴの手法は無数にありますが、その背景はテレビCMの効果の低下とモバイルメディアの台頭と言われています。

テレビはスマホを見ながら片手間で視聴するという形態が増えたため、現在は音でブランドメッセージを届ける、という元来のCMの特徴をより深化させていく必要に迫られています。

また「音」が重要視される理由はまだまだあります。

新しいメディアで再度「音」に注目が!

現在、流行の兆しが見えている音メディアに「Voicy(ボイシー)」があります。

Voicy(ボイシー)は「声と個性を楽しむこれからの放送局」というテーマで2016年の9月にリリースされた声のメディアです。アプリをダウンロードすれば誰でも無料でラジオ番組のような音声コンテンツを楽しむことができます。

ラジオと違うのは、著名な方から一般の方まで誰でも発信できることから、ラジオ局のように編集方針が介入しないぶんよりリアルな本音が聞けることです。また、発信者の中には様々な分野のスペシャリストがいるため有益な情報を得ることができます。

インターネットでラジオが聴けるradiko(ラジコ)、Podcast(ポッドキャスト)なども根強い人気がありますよね。

また、スマートスピーカーがじわじわ普及していることに伴い、現在そのデバイスから発信されるニュースに広告が配信されるような仕組みづくりがなされており、配信の実証実験が2018年7月から徐々にスタートしています。

このように近年注目されるようになった「音」メディア。これからは記事も音声読み上げが主流に?まさかそんな時代が来るのかなんて、今は想像できませんが、想像しておいても損はないのかもしれませんね。

いい文章には「サビ」がある

いろんな記事やコラムを読んでいて思うのは、良い文章には「サビ」があるということです。このことは、私が書いた胸に刺さる一行を書こうという記事でも書いていますが、深く心に残るコンテンツには、忘れられない一行、ワンシーン、ワンフレーズがあります。

読んでくれる人をAメロでどう惹きつけよう、Bメロでどう展開を変えていこう。サビで伝えたいことをエモーショナルに伝えよう。

小説家・村上春樹氏も「音楽を奏でるように、文章を書く。」と言っています。そう、文章は本当に音楽みたいなものかもしれません。

アップテンポなダンスミュージックのような文章。しっとりバラードのような文章。トーンも後味も、演奏次第で変わるんです。最後にどんな気持ちになってほしいか。残したい余韻はどんな色にしよう。なんて、まるで音楽みたいに書くことができる。

そんなふうに視点を変えて考えてみると、文章を書く「楽しさ」にもっと気がつけるような気がしました。

改めて「楽しい」や「好き」という気持ちが本当に大事だなと思います。上手な文章や音楽がつくれることは大事かもしれません。しかし、その根本には自分の大切な気持ちがある。

「ヘタでもいいんだ」

自分にもたまに言い聞かせています。

「好き」って気持ちは誰にも否定することはできないんです。本当に好きなら言葉で説明できないんです。だから否定もできない。そのまま「大切」でいい。

いずれ「楽しい」や「好き」が、あなたをもっと見晴らしのいい場所に連れて行ってくれるはずです。

そして、音を楽しむように言葉を楽しみながら書くことができたなら。そんな文章が書けたなら。きっと読んだ人の心の深くに届くのだと私は信じています。