想像をふくらまそう|すべての書く人を応援する広告コピー研究所 #08

みなさん、こんにちは!

「すべての書く人を応援する広告コピー研究所」新人研究員のモリシタです。

誰かの「胸に刺さる一行」を書くために、世の中にあるお手本から「法則」を抽出し分析していく連載の第8回目!私が見つけた「法則」を引き続き発表していきます。

さて、早速二つのコピーを紹介します。皆さんは共通項を見つけ、どんな法則があるかを説明できますか?

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僕のお父さんは、
桃太郎というやつに殺されました。

(日本新聞協会)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2014)『コピー年鑑2014』宣伝会議

ドキッとする表現ですよね。この広告は「新聞広告クリエーティブコンテスト」の課題「しあわせ」でグランプリを獲得した作品です。ある人にとっての幸せは、別の人から見るとそうではないかもしれない。そんな気づきを見た人に与えてくれます。

そしてもう一つ。

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ごめんなさいと言いたいのに、
鳴いてばっかりで、ごめんなさい。

(LEMON COLLAR)

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※画像出典:東京コピーライターズクラブ(2015)『コピー年鑑2015』宣伝会議

みなさんはわかりましたか?この二つのコピーからこんな法則が抽出できます。

「逆視点の法則」です。他にも、この法則が使われたコピーがたくさんあります。

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おしりだって、洗ってほしい。

(TOTO)

鼻毛は、夏バテしない。

(PHILIPS)

英語ができないだけで、
挨拶ができない人だと思われた。

(ECC)

毎日、命懸けで生きている魚に、
遊びで勝てるわけがない。

(イシグロ)

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また広告コピー以外でも、人ではない「もの」からの視点を描く視点移動の手法はたびたび小説や詩で使われます。

詩人・谷川俊太郎さんが描いた詩の中に、「ひも」というものがあります。こちらも「視点」を変えたおもしろい表現がなされており、私たちの想像力や世界を広げてくれる作品です。

ひも

うまれてからこのかた

ひもにはあたまもしっぽもなく

ふたつのはじっこがあるだけだった

いろあせたこいぶみのたばを

くくっているあいだはよかったが

わけあってこいぶみがもやされ

もうむすぶものもしばるものもなくなると

ひもはすっかりじしんをうしなった

ひきだしのおくでひもは

へびになるのをゆめみはじめる

ちゃんとあたまとしっぽがあるへびに

へびになれたら

ぼくはにょろにょろとおかにのぼろう

そしてとおくのうみをながめよう

しっぽがもうかえろうといいだすまで

引用:谷川俊太郎『谷川俊太郎詩集 すき』(理論社)

視点の移動で最高の一行を見つける

この視点移動の考え方は、コピーを書く勉強をする際の最初のステップとして教わります。コピーライター谷山雅計さんの著書『広告コピーってこう書くんだ!読本』には、この視点移動について触れられている箇所があるので紹介します。

例えば自分の知り合いを100人思い浮かべてみてください。そして、その100人とコピーを書こうとしている対象との関係をひとつひとつ考えていく。

書くべき対象がビールなら、「おじいちゃんとビール」でも、「父親とビール」でも、「赤ん坊とビール」でも、「〇〇先生とビール」でもいい。100人思い浮かべれば、とりあえずは100種類のコピーが書けるわけです。

それでも足りなければ、「宇宙人とビール」でも「織田信長とビール」でもなんでもかまわないから、とにかく関係性を増やしていく。

引用:谷山雅計『広告コピーってこう書くんだ!読本』(宣伝会議)

コピーや企画を考える際、いろんな人からの目線で考えることで切り口をたくさん見つけることができます。

「質」は「量」の中からしか生まれません。

世の中から賞賛を得られるコピーや文章は、私たちが想像する以上につくり手が試行錯誤しながら、何回もの検証を経てできあがっています。膨大なルートの中から選ばれた一本なのです。

そのため過程の中で「量」が非常に重要になってきます。

コピーを「100本書く」という言葉が並ぶと、根性論のように聞こえますがそうではありません。人の「胸に刺さる一行」は、読んだ人が自覚していない潜在的な思いをすくいあげ顕在化し、うれしい驚きや共感を与えられもの。

そのためには、想像力を駆使し光の当たっていないさまざまな視点を見つけてあげる必要があります。その視点の中のひとつが「逆側の視点」です。

熟練した方ほどそのスピードが速くなります。視点をずらしながらいろんな価値を探しに行くことは、良い企画や文章を書く第一歩なのです。

逆側を考えるという突破口

反対側の視点を掛け合わせるとインパクトが生まれやすい。

これは私がデザイナーさんと制作の打ち合わせをしていて気がついたことです。自由演技で新しいものをつくりたい場合、反対側に目を向けることで突破口が開けることがあります。

人と違った新しい視点を評価される場では、違和感のつくり方がポイントです。素直に与えられたテーマに沿ったトーンで表現するよりも、正反対の要素を組み合わせてみると違和感が出て、新しい表現が生まれることがあります。

固いテーマにポップでカラフルな表現を合わせてみたり、柔らかいテーマにかためのコピーを合わせてみたり。反対側ともとれる表現でトライしてみると、一つ抜きでた一手が打てるかもしれません。

以上のような考え方を踏まえ、私が見て驚いた広告がありました。ズバリ違和感を生み出し強い表現を生んだのが、2016年に赤城乳牛が出した広告です。

※画像出典:東京アートディレクターズクラブ(2016)『ADC年鑑2016』美術出版社

制作者の方々がクライアントとうまく共謀してできた広告なのではないかと思いました。シュールな絵が印象的です…!

想像力を鍛えよう

では、視点をたくさん持つための想像力を鍛えるためにはどうしたらよいか。

答え:想像すること

答えになってないかもしれませんが、これに尽きます。もう少し補足すると、意識的に想像してみることです。これは道具もいらず、場所も時間も問いません。

「想像力を鍛える」ことは、抽象的であるがゆえにないがしろにされがちですが非常に大切な力です。しっかり意識することで鍛えることができ、かつ非常に心強い味方になってくれるでしょう。

具体的な方法の例を挙げてみます。例えば、電車の中で目の前に座っている人の名前、性格、家族構成、職業など勝手に想像してみます。

今日どんな朝ごはんを食べただろう、子どもとどんな会話をして家を出てきたのだろう、というように勝手に想像して勝手にストーリーをつくってしまうんです。

それを1分、毎日息を吐くように続けると想像力がメキメキとついてきます。

またこれには副次的な効果があって、例えば電車のホームで誰かにぶつかられてイライラしたとき。

・「これから大事なプレゼンで緊張してて落ち着かないんだな」
・「今にも子どもが生まれそうな奥さんのもとに行くんじゃないか」
・「家族が危篤状態で病院に急いで行かなければいけないんじゃないか」 など

勝手に想像して感情をなだめるという謎のポジティブシンキングが可能です。

自分の機嫌をどううまくコントロールするかで、自分の機嫌は変わります。他人は簡単に変えられないので、自分の考えようで良いようにも悪いようにも変わるんじゃないかなと思っています。

想像力を鍛える場所として電車以外でオススメなのは、銭湯とサウナです。

私はスマホが大好きなので、ネットから強引に隔離される場所に行くことでデジタルデトックスになって考えごとがはかどります。

お湯に浸かってるおじいさんのストーリー、お湯のストーリー、タオルのストーリー、時計の秒針のストーリー、壁の向こう側の女湯のストーリーなど、想像力を鍛えるネタも豊富なのでオススメです。

想像力で届けよう

書いた文章が読んだ人にどう思われるのか?本当にこれで届くのか?書くたびに、そんな苦悩が襲いかかってくるでしょう。

あれこれ不安になるのは、不安の正体がわからないのも理由のひとつです。そんなときは、読んだ人に最終的にどうなってほしいか、という「目標」を一個だけ決めておくといいかもしれません。

ちょっとだけ意識を変えてもらおう。具体的なアクションを起こしてもらおう。疑問を投げかけ考えてもらおう。誰かに話したくなるようにしよう。あったかい気持ちになれる読後感を味わってもらおう。

ひとつだけ決める。すると、迷ってもその指標に立ち戻って見直すことで、ブレずにまっすぐ届けらる文章になります。

そして、それを誰かひとりに向けて届けることを意識する。

先ほど電車の中で、他人の「ストーリーを想像する」ことについて述べました。自分の中で決めた目標に沿って、「想像の中の人」が本当にアクションを起こしてくれるだろうかを考える。それが想像が具体的であればあるほど、文章が磨かれて行くでしょう。ここで、先ほどの人を観察して想像する練習が活きてくるのです。

誰かをよろこばせられるのも、自分をよろこばせられるのも、まずは想像することから。

身についた想像力は、どんな難しいことも解決してくれる万能薬になるかもしれません。