“好き”でメシを食っていく!阿部広太郎の「言葉」と「企画」の秘密

はじめに

「後は、僕のプレゼン次第」

これは、今回の講師である阿部広太郎さんが第49回宣伝会議賞で協賛企業賞を受賞された時のコピーです。講義の中で、ご自身の応募体験を交えながらこのコピーを紹介されたとき、これはまさに阿部さんのことじゃないか! と驚いたと同時に、やっぱり良いコピーって本当の言葉なんだなぁと実感しました。受賞された年に阿部さんが提出したコピーの数はなんと2223本! 応募総数は約40万点!! そこで選ばれる一握りのコピーは何が違うのか。そこに阿部さんの講義は迫っていきます。

コピーライターという職業にとどまらず、「企画でメシを食っていく」を主宰したり「アイスと雨音」や「君が君で君だ」などの映画をプロデュースしたり、クリープハイプの宣伝を担当したり、と多方面で活躍する阿部さん。これらは全て、阿部さんが「企画」をつくり「プレゼン」を重ねてきたことがかたちになったものです。

今回は

「コピー(言葉)」とは?

「企画」とは?

「好きなことをやって生きていく」とは?

といった、皆が抱えている疑問に答えるべく、阿部さんの講義を紐解いてみたいと思います。

そろそろこの、ジャングル写真たちに飽きてきたかもしれませんが、よく見ると違う写真ですのでよく目を凝らしてご覧くださいませ(笑)

不安を量で圧倒してきた

自分でのトーナメント、他者とのトーナメント、トーナメントの向こう

今日はトーナメントの例えを借りて話をしようと思います、と始まった講義。トーナメントには、勝ったという喜び、思うようにいかなかった負けなどさまざまな体験が伴いますが、皆さんはこのような経験をどれくらいしていますか? 自分には不安だらけの選ばれなかった10年があり、そのおかげで今があります…と語る阿部さん。

これだ!という1本を決めるために何本書いたか、というのは自分の中のトーナメント。
対戦相手がたくさんいた方が、1案の輝き、強さが増していくもの。

色んな人と同じ課題に対して横一線に並んで競うことで自分の個性を見つけることができるのが、他者とのトーナメント。自分のベストに足りないものに気づくこともできる。

そして、競合がいない試合に出ること。
あるときから、トーナメントに出ている時点で既に負けているのでは? と思い至り、 “勝手に運命を感じて” 頼まれてもいないのに企画書を書いてプレゼンをしに行くようになったとおっしゃっていましたが、誰もいないところで圧倒的な経験やつながりを得ることって、わかっていても行動に移すのはなかなか難しいものです。

この3つを通じてのメッセージは、とにかく数の重要性! 量が質を作ると信じる阿部さんの説得力といったらありません。

誰でもできるんだからやるしかないでしょ? という情熱は、まさに「今でしょ!」の林先生を思わせました(「今でしょ!」が話題になった東進ハイスクールのCM「生徒への檄文篇」は、阿部さんが制作に携わっています)。

言葉は時代と呼吸する

今回の課題はこうでした。

【課題】
夏目漱石は「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳しました。
2018年、今のあなたなら、何と訳しますか?
その訳した言葉(コピー)に至るまでの思考回路を、
3枚の企画書にまとめて提出して下さい。

1枚目:自分はこう思った(経験)
2枚目:自分はこう目をつけた(本質)
3枚目:自分の言葉(コピー)はこうだ。

*あなたの過去の経験を掘り下げて、「その文字列を読んだ人の記憶を、どれだけ掻き立てられるか?」を意識しながら書いてみて下さい。

これはただの課題ではありません。これだけでもう、大切な大切な教えになっていますよね。誰の中にもある「愛」を、どんな経験からどんな本質を見い出し言葉にするか。
この問いは、これから先、何度でも立ち戻って考えるべき「原点の問い」に認定です!

言葉を紡ぐとき、自分の中で問いを立てる

「愛」とは何か?

当日8グループに分かれてそれぞれが考えてきたコピーを発表し、グループの代表1本を決め、さらにそのグループで選ばれたコピーに個人個人が投票するというグループワークを行いました。たくさん書いて自分が選んできたものを、さらにチームで選んで、ブラッシュアップしていく実践的なワークです。

愛とは無意識
愛とは時間
愛とは行動
愛とは共有

というさまざまな解釈を元に、いろんなコピーが展開されました。コンペさながらに真剣に投票する参加者たち。

なかでも票を集めたものは、

「駅まで迎えにいくね」

「雨が降っても楽しいから」

愛のある行動。帰り道、目に飛び込んでくる電灯のキラメキ。
どんなところで、何をするかじゃなくて、誰といるかが大切という気持ち。
言葉の外に広がる情景が、あなたの中に優しい気持ちを呼び起こしたのではないでしょうか。

これが選ばれる言葉のポイントです。

「例えば」→「つまり」→「こうだ」

コピーになると嘘をつく

自分から離れた言葉に真実はありません。
それでも、みんなを惹きつけるためにかっこいい言葉を書きたくなってしまうもの。
だからこそ徹底的に「それって本当か?」と自問自答することが重要。

ピントをキュキュッと広げたり絞ったりしながら、「たとえば」と「つまり」を交互に考える。つまり、経験と本質はどちらの方向から考えてもよし。このイメージを、伝わる伝える人になるためには頭の中にしっかりと焼き付け、習慣化するしかありません。

企画って人生をよりよく輝かせるもの

企画とはまだ見ぬ未来を望むこと

「企画を作る」と聞いて、あなたはピンときますか?
企画書ってどうしてもビジネス感満載な言葉ですよね。しかし、阿部さんの語る「企画」は、コピーライター、ましてや仕事の枠にはとどまらないものでした。「企画」に言葉の力を合わせれば、日常でもものすごく色んなことが上手く行くようになるのではないか!? と考え抜いた阿部さんは、「言葉を企画する」=「言葉に企て(ヤジルシ)を加える」という公式を編み出し、そのなんたるかを伝え続けています。

企て=ヤジルシ、って?

「物は言いよう」という考え方

ヤジルシが意味するのは、まさにこれ。
講義での例を挙げてみます。

福岡出身のシェフがNYで明太子を「たらの卵」として売り出したところ、もともと生の卵を食べる習慣のないニューヨーカー達に気持ち悪いと酷評されてしまった。そこでちょっと言い方を変えて「博多スパイシーキャビア」として売り出したらバカ売れした。

これが阿部さんのいうヤジルシです。
普通にいえばA(明太子)だけれどB(博多スパイシーキャビア)とも言える。A → B。

「言葉」によって→「概念」を定義し→「行動」を促す。

実はこれって、コピーライター、ライターに限らず誰でもやっていること。しかも、日本に限らず海外でも通用するこの公式!「企て=ヤジルシ」を使いこなせれば、目の前の見える景色が変わってくるはず。そんな企てをするチャンスが、目の付け所を変えるだけで人生に溢れていると思うとワクワクしてきませんか?

企画書を相手に贈るときに大切な心構え

チャンスを掴むより心を掴め!

本当は企画書なんてない関係が理想。でも、まずはその関係性を作るために企画書が必要です。講義で公開して下さった阿部さんのマル秘企画書のファイル名にはラブレターという言葉が入っていました。そんなところもとても阿部さんらしくてグッときます。

阿部さんの語る企画書のポイント

  • 自分が本気で、相手が喜ぶか考え抜いてあり、実現可能であること
  • 「ヤジルシ」を共有していく書類であること
  • 愛を持って、周りを巻き込んでいけるものであること
  • 本気はみせるが、決めつけないこと

阿部さんが課題を通して「愛」を問うたのは、企画書を作るときの「愛」にも繋がっていることに気がつきました。自分の中の愛情を知って、それを伝えることがつながりを生み、お互いの良いところを持ち寄って初めて「仕事」ができるということ。

ついつい目先の仕事にフォーカスを合わせがちな自分の堪え性のなさをポカリ! とやられ、なんだかすがすがしくすらありました。

企画書は貨幣に似ている

企画書は一人歩きするもの

今回の課題を通じて、読み手に読んでもらうことに無自覚な人が多い! とのご指摘を受けました。ファイル名に自分の名前を入れているにしても名前を書いていない人が多かったですと。

なんで!? という疑問はもっともだと今なら分かります。しかし、指摘されるまで気がつかず…私も企画書内に名前を入れていなかった1人。
企画書は自分を離れていくものだからそれだけで完結しておくことが重要で、企画書が流通することでいろんな縁をつれてきてくれる、ということがとても端的に現れていて、ぜひ心に留めておきたい言葉です。

さいごに

“好き”でメシを食っていく

自分の講義を通じて企画してみたいという人が1人でも増えていけばいいな、とおっしゃる阿部さん。それはつまり、それぞれの人生がより輝くといいな! という願いと、皆が好きなことをして生きていけば確実に世の中が良くなっていくに違いない! という信念、なのかなと感じました。
好きなことで生きていく、ってどこかキレイごとに聞こえてしまいがちですが、決して楽をして生きていくことではありません。好きなこと“だけ”とも全く違います。

自分の好きなことを見つける、知る、創る。自分にしかできない好きなこと。
実現するにはまず、興味を持ってもらわなきゃ。
そのためには、企画を作ってプレゼンが必要だ。
人生、やってみなければ分からないことばかり。
行動の結果、企画が、言葉が、人を繋ぎ、自分の成長や変化が始まる。
そして、“好き”が仕事になっていく。

企画の力を信じ、頑張る全ての人を応援し、自分も前へと進み続ける阿部さんは、まさに自分の道を自分で作り歩む人。その素直さと真面目さが生み出す言葉が周りの人を巻き込んでいく。講義で投げかけられる言葉も、どれをとっても金言といえるものばかりでした。阿部さんから受け取った企画への情熱とスキルを胸に、次は、あなたの企画が、わたしの企画が、誰かの心を掴みますように。

待っていても、はじまらない。潔く前に進め。

現在、明日のライターゼミ「2018・秋生」を募集中です。ご興味のある方は募集ページにアクセス下さい。
明日のライターゼミ 2018・秋 募集ページ