文章の読みやすさはココで決まる。宮脇淳流『文章の魅せ方』を実践してみた。

言葉は生き物である

 

流行語という言葉がある。

【流行語】
ある一時期に興味をもたれ、多くの人々によって盛んに使用される単語や句。はやり言葉。(『大辞林 第三版』より引用)

時代によって成す意味を変え、使われる場面を変え。
刻一刻と言葉はその形を変えていく。

2013年に流行語大賞を受賞した「今でしょ! 」は、現在使うと、なぜか苦笑が生まれ微妙な空気を漂わせてしまう。2013年はあれほど流行したのにも関わらずだ。

 

一方、死語という言葉もある。

【死語】
過去に使用された言語で、今では一般の言語生活上使われなくなった言語。
(『大辞林 第三版』より引用)

 

即ち、言葉は生きている。

 

だからだろうか。

生きている言葉から生まれる文章は少しの変化を加えるだけで、読みやすさも全体の意味合いも変わってしまう。

 

以下の例文を見ていただきたい。

①そのため、宗教本なのだととれる本書だが、会社や社会でこれから学んでいく新社会人の人たちに、社会人としてどのように考え、社会と同じ時間を過ごし、行動し、将来像をどう描いたら良いか、プライベートの時間もどのようにリフレッシュし勤勉であるべきなのかなど、新社会人すべての人たちに宗教本だからと言わずに一歩下がった視点を持って読んでほしい一冊だ。

②そのため、本書は宗教本だという誤解を招くかもしれない。しかし、仏教の教えは現代社会を生きる新社会人たちに大いなるヒントをあたえてくれるはずだ。社会人として何を考え、いかなる時間を過ごし、どのような将来像を描くのか。宗教本だからと安易に敬遠せず、日常生活を俯瞰するような視点を持って読んでほしい一冊である。

①は読みにくいが、②は読みやすい。
そして、この2つの文章に違いは数ヶ所しかない。

青の部分を赤に変え、整えただけなのだ。

言葉の片鱗に少しの変化を加えることで、文章全体が大きく変わることを示している。

この小さな介入は一見簡単に見えるが、背後には膨大な文章に向き合い続けてきた人によって確立された理論がある。

 

宮脇淳さんだ。

 

『宮脇淳』
WEB編集者、雑誌編集者のアルバイトを出発点に25歳でライター、編集者として独立。5年半のフリーランス活動を経てコンテンツメーカー有限会社ノオトを設立。オウンドメディアのコンテンツ作成、五反田でコワーキングスペース、コワーキングスナックを運営するなど活動は多岐に渡る。

宮脇さんによる第6回明日のライターゼミ講義が先日DMM.com本社で開催された。
タイトルは「文章とタイトルの磨き方」。

たった一つの接続詞を変える。
たった一つの読点を変える。
たった一つの単語を変える。
・・・

これだけで、読みづらかった文章を生き返らせる。
そこには、まるで手品を見ているかのような驚きと感動があった。

今私が執筆している記事自体読みづらいものであり、大変恐縮ではあるが講義レビューを通して、ぜひ皆さんにもいくつかご紹介したい。

 

 

一文が長いから読みづらい

 

読みづらい文の一つとして、「一文が長い」という特徴が挙げられる。
以下の例文を見てみよう。

このソリューションによって、社員の業務に対する習熟度が飛躍的に上がるのみならず、運営スタッフのさらなるモチベーションを喚起させることにつながり、そのためには会社の制度として資格手当をより拡張させ、社内勉強会を定期的に開催することが望ましいと私は考えています。

これは長い。
「上がるのみならず」くらいから、私の魂は文章から離れていく。皆さんもきっと同様に読みづらさを感じているだろう。

さて、ここに何を加えると良いだろうか。
宮脇さんは次のように述べた。

 

「全然分からん。文章を切ろう」。

 

すると

この社内研修によって、社員の業務に対する習熟度が飛躍的に上がるでしょう。一人ひとりのスキルが目に見えて高まれば、周囲に刺激される社員も増えるはずです。これにとどまらず、資格手当を拡充したり定期的な社内勉強会を開いたりすることが、会社の業績アップにつながると私は考えています。

 

見違えるほど読みやすくなっている。
ポイントは、赤で示したところだ。

当然、本来つながっていた文章を切ると、その前後の文も一部合わせて変えないといけない。長い文章を切るだけで、一つ一つの言葉が歯車のように少しずつ形をゆがませ、全体として読みやすい文章へと移り変わっていく。

この変化には美しさすら感じてしまう。

 

 

「、」の位置が適切でないと読みづらい

 

次に操るのは読点だ。以下例文を見ていただこう。

著者の藤田氏その延長線上にある資本主社会主義といった経済の論自由民主主義という欧米が中心となって広めてきた価値観を徹底的に批判する。

「、」が多い。

実際に声を出して「、」ごとに息継ぎをすると、過呼吸になりそうだ。ぜひやってみてほしい。

これを宮脇さんは「同列に並べられるワードかどうか」を基準に整理していく。


「読点の位置は適切なのか」。

 

『自由、平等、民主主義』はセットとして世の中把握されていることに異論はないだろう。しかし「、」によって『経済の論理』が『自由、平等、民主主義』のセットに加わっている。

そこに目をつけたのだ。

 

すると以下のようになる。

著者の藤田氏は、その延長線上にある資本主義、社会主義といった経済の論理だけでなく、自由、平等、民主主義という欧米が中心となって広めてきた価値観を徹底的に批判する。

 

やはり読みやすい。

「及び」ではなく、「だけでなく」なのだ。
「及び」だと意味合いとしては「、」と同じ。ただの並列になるが、「だけでなく」だと逆説的な要素を含んでいるため、強調の点で『論理』と『自由、平等、民主主義』の間にさりげない線が引かれる。

not only but alsoだ。

 

他にも

  • 主語と動詞を整理・整頓する
  • 5文型に当てはめる(結果的に)
  • 6W2Hの抜け漏れを確認する
  • です・ます調、だ・である調はどちらかで統一
  • 1文字落とし、改行位置、1行空きの位置を意識する
  • 文章の語尾のリズムを意識し、繰り返しを避ける
  • 表記の開く・閉じるを意識する
  • 一文が長くなりそうなときは途中で切る・つなぐ
  • 推敲においては、削れる箇所は思い切って削る
  • 事実は、なるべく先に出しておくと伝わりやすい
  • 記事の信頼性を高めるため、データを使う
  • 事実誤認、発言の曲解、法令違反をチェック
  • 日本語の間違いに気付けるか?
  • 「など」を多用しない
  • 漢字、カタカナ、ひらがなのバランスを考える
  • 類語のバリエーションを増やす
  • 自分自身の書かない「ポリシー」を決めよう

 

など例文と共に多く紹介して頂いた。
どれも少しの変化、細かな調整で、こんなにも文章が変わるのかと感動し続けていた中、


ふとあることを思い浮かんだ。

 

(もしかしたら、「宮脇さんだからできるんだろ?」「宮脇さんが用意してきた文だから美しく見えるんじゃないの?」と思っている人がいるかもしれない)

と。

 

 

ということで実践してみた

 

何事もやってみないことには分からない。
早速試してみよう。

まずは読みにくい文章を探すところからであるが。
悲しいかな、すぐに見つかった。
なんと前回私が執筆した田中泰延さんの記事内に存在した。

「自己紹介は自分を売り込む最強のツールだ!」と田中泰延は言う

 

以下の部分である。

 

即ち、「私は公受裕樹です。島根県出身です」というのは最悪な自己紹介ということだ。でも多くはこのような自己紹介をしがちである。
自分を売るために必須の技術である自己紹介力を磨くことはライターにとって必要不可欠であり、本講義では自分のポスターを作るという課題を通して、そのことを学べる内容となっていたわけだ。

読みにくい。我ながら読みにくい。
掲載した後も、なぜこの文章が読みにくいのか全く理解できなかった。


しかし今の私なら修正可能・・・
なはずだ。

 

ポイントは以下の通り。

①「という」が連続している。
②「多く」を使っているがデータがない
③一文が長い(修飾が長い)
④主語、述語の関係を明確にできていない
⑤指示語の示す言葉が曖昧
⑥5文型をチェックする

これらを意識して、修正してみる。

 


★「という」を別の言葉に置き換えた

【修正前】
即ち、「私は公受裕樹です。島根県出身です」というのは最悪な自己紹介ということだ。

【修正後】
即ち、「私は公受裕樹です。島根県出身です。」といった自己紹介は好ましくない。

 


★明らかなデータがないので、「多い」と言い切らず、「よく見かける」という言い回しにした

【修正前】
でも多くはこのような自己紹介をしがちである。

【修正後】
しかし、実際は似たような自己紹介をよく見かける。

 

③④
★長い文だがリズム感を考慮し2つに分けないことにした
★主語を「~こと」から「ライター」に変え、主語と述語の関係性を明確にした

【修正前】
自分を売るために必須の技術である自己紹介力を磨くことはライターにとって必要不可欠であり、

【修正後】
ライターは自分を売るために自己紹介力を磨く必要があり、

 

⑤⑥
★指示語である「そのこと」を明確にした
★SVCにした

【修正前】
本講義では自分のポスターを作るという課題を通して、そのことを学べる内容となっていたわけだ。

【修正後】
本講義はその力の重要性を、自分のポスターを作ることで学ぶ内容だったのだ。

 

以上修正完了。
まとめると、

 

即ち、「私は公受裕樹です。島根県出身です。」といった自己紹介は好ましくない。しかし、実際は似たような自己紹介をよく見かける。ライターは自分を売るために自己紹介力を磨く必要があり、本講義はその力の重要性を、自分のポスターを作ることで学ぶ内容だったのだ。

 

全然違う・・・。

すごい。これまで、どう直せばいいか分からなかったが、今ならいくらでも直せる勢いだ。

これが文章力か。自分の文章力のなさに泣けてくる。

どうだろう。ぜひ皆さんも実践して頂きたい。
きっと、修正し文章が息を吹き返した時の感動を共有できることだろう。

 

 

最後に:信用・信頼を得たライターが生き残る

 

「アイドルの○○さん、ノーバン始球式」をご存知だろうか。

野球試合の始球式に関する記事のタイトルに「ノーバン始球式」を含める手法が一時期流行った。

確かに、アイドルが投げたボールをキャッチャーが途中でバウンドさせずキャッチできれば「ノーバンで投げた」と言えるため間違ってはいない。

しかし、このタイトルを
「アイドルの○○さん、ノーパン始球式」と勘違いしてしまいクリックする人が増え、PV数にも影響を及ぼすといった現象が起きたのだ。

すでにお分かりかと思うが。
記事の本筋に即していない釣りタイトルである。

記事を書く上で、避けなければならないことがある。


タイトルのせいで、記事を読んだときに読者を『がっかり』させてしまうことだ。

 

宮脇さんは言う。

 

もう釣りタイトルはやめよう。

 

せっかく文章力を磨き、良い記事を書いても、クリックを促すため本筋に即さないタイトルをつけてしまうと、読者を落胆させ信用・信頼を失う。

その代償はあまりにも大きい。

今後、ライターとして生き残るためには文章力だけでは不十分だ。

 

  • 企画力:誰が書くか、何を書くか、誰に届けるか
  • 人脈力:記憶力、コミュニティ、利他的な精神
  • 文章力:語彙力、構成力、リズム感
  • 取材力:下調べ、アポ取り、インタビュー
  • 送受信力:知識欲、引き出し、発信力

 

以上をまとめて編集力といい、この総合力が求められ始めている。

当然、「信用・信頼を得る力」も含まれており、
宮脇さんはそれを「自分のファンになってもらうこと」と述べた。

インターネット上には膨大な数の記事があり今も尚、増え続けている。読者はその中からある基準に沿って選択し読むことになる。その基準の一つとして信用・信頼(ファンであること)はより重要な指標となるだろう。

 

信頼のないライター、信用のない記事から人は離れていく。

 

肝に銘じておこう。
明日のライターとして生きるために。

 

 

追記:実は講義に参加していない私

 

さて、今回の講義も非常に有意義な時間だったわけだが、ここであることをカミングアウトしよう。

 

私は当時九州にいたため、講義会場に行けなかったのだ!

 

今回あたかも会場にいたかのように書いてみた。
いかがだろうか。


ちなみに、それを可能としたのが

 

明日のライターゼミFacebookによるLIVE配信である。

 

 

WiFi環境さえあれば、どこでも視聴できる。
映像も綺麗だ。通信が遅れることもない。
さらにFacebookのコメントでリアルタイムに質問ができる。

会場の中で講義を受けていると錯覚させるほどの臨場感だ。

さらにさらに!!

Facebookで過去の動画は見放題!
(※視聴可能な期間は決まっている)。

講義中、聞き逃したりメモし忘れても全く問題なし。
講義をもう一度見たいと思えばいつでも見れるのだ。
ちょうど私は講義中、仕事だったため後日視聴し本記事を書き上げた。

 

北海道、沖縄、海外、WiFiさえあればどこでも受講できる。
あとは気持ち次第!

それが明日のライターゼミだ!

現在、明日のライターゼミ「2018・秋生」を募集中です。ご興味のある方は募集ページにアクセス下さい。
明日のライターゼミ 2018・秋 募集ページ

ABOUTこの記事をかいた人

公受裕樹

金沢大学医学部医学科卒。高校3年間で100冊以上の参考書を学ぶ。大学では教育に興味を持ち学習塾を設立。現在は、精神科医と並行し「勉強方法辞典」、「ペンペン先生」を運営。全国の学生に勉強方法を伝えるべく活動中。