嶋浩一郎が言う『21世紀で最高にセクシーな職業』とは

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ウェブはブランドを作れるか?

 

皆さんこんにちは。

精神科医なのに言葉が苦手な公受裕樹です。

『明日のライター』ではゼミの講座を皆さんにご紹介するため記事を書いています。これまでは田中泰延さんや、

「自己紹介は自分を売り込む最強のツールだ!」と田中泰延は言う

 

宮脇淳さんの講座を記事にまとめました。

文章の読みやすさはココで決まる。宮脇淳流『文章の魅せ方』を実践してみた。

 

そして今回は2018年8月3日に行われた嶋浩一郎さんの第9回明日のライターゼミ講座「ウェブはブランドを作れるか?」をご紹介します。

 

嶋浩一郎(以下嶋さん)

博報堂ケトル共同CEO
1993年に博報堂に入社しコーポレーション・コミュニケーション局を経て2001年に朝日新聞社に出向。「SEVEN」編集ディレクターを務め2002年から2004年までは雑誌、広告の編集長、2004年には「本屋大賞」の立ち上げに参加。現在NPO本屋大賞実行理事を務めている。

 

 

本屋がビールを売る理由

 

嶋さんは堀江貴文さんと同じように多動な働き方をされています。

音声で入力すると物を作り出してくれる3Dプリンターを作ったり

 

 

「津波はこの高さまできました」というソーシャルな広告を作ったり

 

 

CMを作ったり

 

 

本屋大賞という仕組みを作ったり

 

 

なんと実際に本屋も運営されています。
本屋B&Bです。

 

 

でも今の時代、本屋の経営は非常に厳しいと嶋さんは言います。

 

嶋さん「高度成長期、本屋は店を開けていれば大丈夫だった。しかし今、どれだけ素敵な本屋でも経営は厳しい。21世紀に成り立つ本屋を作る必要がある」

 

そこでB&Bではある施策を打ち出しました。
なんと本屋でビールを売り始めたのです。

なぜビールを売るのでしょう。

 

あなた「本以外に収益を確保するため?」

 

当然そう思いますよね。
講義で嶋さんも同じことを言っていました。

他にも定期的にイベントを開催したり、本屋で使っている本棚を売ったりと、経営を成り立たせるために企業努力をされているそうです。

しかし講義が終わって私はあることに気付きました。
講義では触れませんでしたが、実は「B&Bが売るビール」にはもう1つ重要な役割があったのです。

 

 

嶋さんが講義で最も伝えたかった「本屋で売るビールの役割」と「21世紀に通用するための鍵」をご紹介する前に、

いくつかのテーマについてお話をしましょう。

 

 

Google広告から学ぶ21世紀のメディアが目指すべき姿

 

この広告をご覧ください。

 

 

な・・・なんて書いてあるんだ・・・
『.com』があるから、何かウェブサイトのページかな。
英語も苦手な私にはハードルが高い・・・

ということで、嶋さんが訳してくれました。

 

 

それでもよく分からない・・・
実はこれGoogleのエンジニア採用広告だそうです。

 

あなた「どういうことや。これが採用広告?」

 

そう思われるのも当然です。
ただGoogleはこの広告だけで1000人以上の優秀なエンジニアを採用したそうです。

一体何が起こったのでしょうか。

採用までの流れは非常にシンプルです。

広告のカッコ内にある難しい問題を見て興奮した優秀な理系学生が、問題を解き{答え}.comとネットで検索します。
すると新しいウェブサイトが現れ、そこには再び新しい{難問}.comがのっています。
そしてまた問題を解き、{答え}.comで検索します。

これを繰り返すと、最後に「おめでとうございます。Googleはあなたを採用します」と採用通知がくるのです。

 

めちゃくちゃcool!!

 

当時、Googleは優秀な理系学生がマイクロソフトやyahoo!に流れてしまい、Googleに入社してこないことを課題にしていました。

そして課題に対し打ち出した策がこの広告です。実際1000人以上の優秀な理系を採用したため広告は大成功でしょう。

と同時に、この広告は1000人以上の優秀な理系学生を行動させたと言えます。

なぜ学生たちは行動を起こしたのでしょう。

 

Googleの広告には人を動かすために欠かせない2つの重要な要素がありました。

  1. 自分が気づいていない欲望を満たしてくれる広告だった(俺は超難しい問題を解きたい!!!っていう欲望)=インサイト満たす広告だった
  2. 「これは自分に向けたメッセージだ!」と思わせる広告だった=レリヴァンシーを意識した広告だった

これらを満たした広告を優秀な理系学生(ターゲット)に向け発信したからこそ、1000人以上が行動にうつしGoogleは課題をクリアしたわけです。

 

 

話はここで終わりません。

実はこのインサイトとレリバンシーを意識したGoogle広告の成功事例こそ、21世紀にメディアとして生き残るためのヒントだったのです。

 

 

港区おじさん、港区女子は具現化されたインサイト

 

港区おじさん、港区女子をご存知でしょうか。
これらは東京カレンダーというウェブメディアから生まれた言葉です。

今や港区おじさん、港区女子のドラマやファンパーティも開かれているようです。

すごいですね。

 

ところで、同じようにメディアから生まれた言葉は他にもあります。

  • おひとり様
  • 草食系男子
  • エビちゃんOL
  • ちょい悪おやじ

皆さんどこかで聞いたことがあるかと思います。
これらは社会記号と言い、従来紙メディアが生み出してきたと嶋さんは言います。

 

 

紙メディアは境界があるため統一された世界観を作ることができ、その世界観に共感したファンが集まります。

そしてメディアはファンの行動の変化にいち早く気づき、彼らの潜在的な欲望(インサイト)を社会記号として表します。

すると社会記号として定義された人々の欲望を包み込むようなサービスが生まれ、瞬く間にビジネスに発展します。

一方、主にPV数を評価基準にしてきたウェブメディアには境界がなく統一された世界観を築きにくいため、新しい社会記号やビジネスを生み出しづらいことが課題でした。

そんな中、ついに社会記号を生んだウェブメディアが登場しました。

 

東京カレンダーです。

 

東京カレンダーは統一された世界観を作り、集まったファンの潜在的欲望を港区おじさん、港区女子という社会記号で具現化し次々と新しいビジネスを生み出しています。

これこそ、まさに21世紀に通用する新しいウェブメディアと言えるのです。

 

 

中島みゆきがラジオ番組で午前4時に天気予報を読む理由

 

皆さんはラジオを聞きますか。

ラジオって良いですよね。心地よい声で。どんな時間帯でも流れていて。
まるで自分に語りかけてくれているような錯覚に陥ります。
1人孤独に勉強している時、ラジオから言われる「お疲れ様」が身にしみていました。

『自分に対して語りかけているような』がラジオの良さの1つです。

これをレリヴァンシーといいます。レリヴァンシーの高い情報は「この情報は自分に向けてのものだ」と受け手に思わせファンに変えます。

ラジオでは「ラジオの前の皆さん。こんばんは。」とは言いません。
「皆さん」ではなく「あなた」と言うのです。また中島みゆきさんは朝4時に「あなた」に向けて天気予報を読んでくれます。

午前4時、孤独で寂しい時間帯を中島みゆきさんと一緒に過ごしているわけです。

 

 

ラジオはレリヴァンシーの高いメディアです。だからこそラジオには根強いファンが残っています。

新しいメディアが次々と出てきている昨今において、顧客はリーチではなくレリヴァンシーの高さでメディアを選びます。従ってメディアは21世紀を生き残るためにレリヴァンシーの高さも追求していく必要があるのです。

 

 

人は潜在的な欲望を満たされる人やサービスに感謝する

 

人は2つの欲望をもっています。
言語化できる顕在的欲望と言語化できない潜在的欲望です。

 

 

言語化できるということは「これがほしい」と自ら行動し満たすことができます。この欲望を満たすサービスはたくさんあります。amazonやZOZOタウンなど代表的ですね。

そして人は顕在的欲望を満たすサービスに対し感謝しません。自ら欲望を満たそうと行動できるので満たされるハードルが低いからです。

 

一方、人は潜在的欲望も持っています。
「何かやりたいけど何がやりたいかわからない」というのはまさに潜在的欲望です。この言語化できない欲望をインサイトといいます。インサイトはなかなか明確にできないので自ら行動し満たすことが難しい欲望です。

従って誰かに満たされる必要があります。
しかし、そのようなサービスはまだ少ないのが現状です。
だからこそ潜在的欲望を満たすサービスに対して人は感謝します。
そして満たしてくれたサービスのファンになります。

「なぜかこのサービスは自分の好きなことを当ててくれる」と。

 

 

B&Bがビールを売る本当の理由

 

さて嶋さんは21世紀通用するメディア論として

『世界観を作り、そこに集まるファンやコミュニティに存在するインサイト(潜在的欲望)を先回りする』

『レリバンシーを意識しながらインサイト(潜在的欲望)に応えることでファンやコミュニティを拡大する』

『リーチよりもレリバンシーの高いメディアとして確立することが21世紀を生き残る鍵である』

とまとめました。

 

このメディア論を組み込み完成した本屋が
B&Bです。

 

 

5~6分で一周できる比較的狭い店内はB&Bが選ぶ本によって独特な世界観が作られています。

客は本屋を回ることで潜在的欲望や知的好奇心を刺激され、買おうと思っていなかった本を買ってしまいます。

本を購入した客は満足感と本屋に対する感謝を抱き「また来よう」とB&Bのファンになるわけです。

まさに自分の知らない欲望を気づかせ満たしくれる本屋です。

ではなぜ本屋でビールを売るのでしょう。
私は収益以外にもう一つ重要な役割があると考えます。

それは「客のインサイトを顕在化しやすくする役割」です。

皆さんも経験したことがあるでしょう。お酒を飲むと楽しくなり、普段言わないようなことを言ったり、しないようなことをしたり。つまり大胆になります。ビールなどに含まれるアルコールには人を脱抑制させる効果があり、潜在的な欲望が顕在化されやすくなります。

即ちB&Bは

とことん人の潜在的欲望をさらけ出させ
満たして気持ちよくさせる
21世紀に通用する本屋なのです。

 

 

最後に:21世紀最高にセクシーな職業とは

 

現在ロボットやAIの技術が発展し、私達の職業について語られることが増えてきました。例えば以下のような記事。

2009年2月、米グーグル チーフエコノミストのハル・バリアン氏は「今後10年で最もセクシーな職業は統計家だ」と発言。さらに、米ハーバード・ビジネス・レビューの2012年10月号は、データサイエンティストを「21世紀で最もセクシーな職業」と表現した。

(https://tech.nikkeibp.co.jp/it/atcl/watcher/14/334361/111900118/より引用)

一時期話題になりましたね。

確かに、ビッグデータを高度な統計解析ツールで収集、加工、分析し、ビジネスに活用できる知見を引き出す統計学者は素晴らしい職業です。

ただ、統計学者が扱うビッグデータは人の顕在的欲望を満たすサービスから生まれたデータです。

氷山で言うと水から出ている部分です。

 

 

この氷山の一角に含まれた顕在的欲望同士の相関を数字で導き出しビジネスに利用するわけです。しかしこの顕在的欲望を満たすサービスは世の中に溢れています。

一方、隠れている潜在的な欲望を満たすサービスはどのくらいあるでしょうか。すぐには思い浮かびませんよね。おそらく未開拓な領域であることは間違いありません。

B&Bを作った嶋さんは言います。

「21世紀最高にセクシーな職業は人の潜在的欲望を先回りして言い当ててあげるコンテンツをつくれる職業である」と。

これからはどの職業もインサイトとレリヴァンシーを意識し、21世紀で最高にセクシーな仕事をしなければ生き残れない時代になるかもしれませんね。
 
 
 
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ABOUTこの記事をかいた人

公受裕樹

金沢大学医学部医学科卒。高校3年間で100冊以上の参考書を学ぶ。大学では教育に興味を持ち学習塾を設立。現在は、精神科医と並行し「勉強方法辞典」、「ペンペン先生」を運営。全国の学生に勉強方法を伝えるべく活動中。