なぜ書きたいのか? という古田大輔さんの問いがライターの明日をつくる

問いによって、自分の考えが導かれていく

今回、明日のライターゼミに登壇いただいたのはBuzzFeed JAPAN編集長の古田大輔さん。

僕は、3期連続で明日のライターゼミを受けていて、全部の講義を拝聴させていただいている。ゼミは「書き手の視点」/「編集の視点」の2タイプに大きく分けられる。

古田さんのゼミは、メディアの在り方、ライターとしての未来について「編集の視点」の講義であり、投げかけられた問いからの示唆が非常に強かった。

この記事を読んでいただいた方には、古田さんからの問いについて自分ゴトとして考え頂きたい。

古田大輔さん プロフィール

1977年生まれ、福岡県出身。2001年早稲田大学政治経済学部卒、2002年朝日新聞社入社。京都総局、豊岡支局、社会部、アジア総局(バンコク)、シンガポール支局長、デジタル版の編集などを経て、2015年10月16日にBuzzFeed Japanによる新メディアの創刊編集長に就任。

 

 

20世紀と21世紀で情報の生態系が変わった

20世紀:垂直統合「新聞社が作った記事を新聞紙に印刷して販売店が配る」

21世紀:水平分業「テレビ会社が作った動画をNETFLIXを通じてTVで見る」

20世紀の情報を取り巻く環境は垂直統合型の形式だった。21世紀になると、新聞記者が作った記事はヤフーニュースに掲載されスマホで見られる。​テレビ局が作った動画は、ネットフリックスを通じてテレビで見られる。このように、制作したコンテンツが、その企業を通じてのみユーザーに届く(垂直統合)という時代は終わってしまった。

 

この視点は、非常に示唆が深い。

なぜなら、それぞれのメディアの競合相手が同業他社ではなくなってしまったからだ。

 

20世紀の新聞社の競合は新聞社同士だった。市場シェアを取るために、新聞の営業さんが訪問して、トイレットペーパーやスポーツ観戦のチケットなどをネタに、契約変更をお願いしていたし、テレビであれば、NHK+民放4社+αが競合で、同じ時間帯の中でいかに視聴率を取れるか? というのが全てだった。

市場環境は様々な分野で変わってきているが、特に情報接点は劇的に変化している。また、ここ数年で世の中にあふれる情報量は爆発的に増えてきている。

(出典:BELINDA

4マスと言われていたラジオ/新聞/テレビ/雑誌という聖域が崩壊し、個人が主体となるSNSや独立系のWEBメディア、そして新たな波としての動画系メディアなど、僕らとメディアの情報接点は目まぐるしく変わってきている。

よくある「ビジネス系メディア」や「マーケティング系メディア」的な着眼点からの書き出しとなり、ライターゼミなのだから「書く」という範囲の学びに集中すべきではないか? という疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。だが、僕らが置かれている環境を知るというのは、ライター、そして僕も含めて書くことに興味がある人には極めて重要な視点だと思う。

なぜなら、ライターとは「書く」の先にある「伝える」「届ける」を考えなければならない状況だからだ。

 

「伝える」「届ける」という視点で考えると、ライターの競合はライターだけではなく、動画のクリエイターかもしれないし、Voicyのような音声サービスの作り手なのかもしれない。情報の生態系が変われば、その舞台にいるライターの考え方も変わらなければならないと感じた。

 

 

今の時代のライターの伝え方(ひとつのケース)

ゼミの中で、古田さんからiPhoneXの記事を紹介してもらった。是非、下記のリンク先から本文を読んでいただきたい。

「iPhone Xは、買いなのか? 使ってみてわかること、すべて」|Buzzfeed

(出典:BuzzFeed

 

この記事を書いた嘉島唯さんは個人的に好きな書き手さんで、BuzzFeedのインタビュー記事やnoteでの文章など、とても心に刺さる文章を書いているBuzzFeedの社員ライターさんだ。

テストの最終日、とんでもなくバズってしまった僕は、気がつけばサマソニのステージに立っていた|BuzzFeed

エモい文章の作り方|note

記憶に残っている文章を上げればキリがないが、情感豊かに文字を書く方と印象を持っていた。その嘉島さんが、iPhoneXの記事を「写真+50文字」のほぼ紙芝居型の記事を書いてたことに、僕は衝撃を受けた。

 

「どうすれば読者に的確に伝わるか?」を考えた際の最適解は、「書くこと」だけではない。その視点から始められるライターこそ、明日のライターでは?

 

古田さんがゼミの中で、嘉島さんのiPhoneXの記事を上げたことから、そんなメッセージを感じた。

 

 

デジタル時代のメディアに必要な3つの戦略

コンテンツ=どう作るか

ディストリビューション=どう届けるか

エンゲージメント=どう巻き込むか

どう作るか? どう届けるか? どう巻き込むか?

この3つのポイントはそれぞれが独立しているのではなく、メディアとしてそれぞれ筋が通っていることが大切だ。

とある方が、オウンドメディアを立ち上げる際のポイントを質問した際、古田さんはこの3つを例に出して解説していた。

例えば、どう届けるか? メディア立ち上げ期は、情報拡散力のあるインフルエンサーを編集やライターに起用しようと考えることも多い。しかし、そのインフルエンサーはそのメディアの目的や方針に心の底から共感しているのだろうか? 多くの場合は、いくつかある案件の一つとして受けている。(受け手に問題があるわけではない)情報が氾濫している時代では、表面上の影響力は見透かされてしまうだろう。

 

どう作るか? の目的に合ったどう届けるか? を丁寧に作らなければならないし、ユーザーを巻き込むエンゲージメント(=関与)を考える必要がある。

・・・この記事を書いている僕も1年半ほど前から、オウンドメディアの運営責任者をしている。

立ち上げて数カ月たった時、メディアの知名度をぐっと高めようと、ある拡散力の高いライターさんに記事を書いてもらった。元々のオウンドメディアの世界観とは異なる記事だったので、結果的に短期的なバズは起きたが、メディアにとっての積み上げがほぼ無かったということがあった。

その経験を活かし、先日、明日のライターゼミでも登壇していた某ライターさんに寄稿してもらったことがある。その際は、丁寧にメディアの目的を伝え、既存の読者さんとの親和性を考えた企画を打診することで、瞬間風速ではなくメディアの資産となるような記事をつくることができた。

 

メディアとしてライターに依頼する側である編集も、そして、受ける側のライターも、どう作るか? にとどまらず、どう届けるか? どう巻き込むか? を考えることは非常に大切だと思う。

 

 

僕らが書き手として歩む上で大切なこと

ライター、そして書くことに興味がある人に向けて、古田さんから以下ような問いが投げかけられた。

何を書きたいんですか

どう書きたいんですか

誰に書きたいんですか

なぜ書きたいんですか

古田さんご自身は、学生時代の原体験が書きたいと思ったきっかけだったそうだ。

メディアとしてマネタイズをしたければ、有料会員の仕組みを作ったほうが経営は安定する。しかし。古田さんはBuzzFeed創業者CEOのジョナ・ペレッティの理念、「人々の実生活にポジティブな影響を与える。」に共感し、現在に至る。

古田さんのエピソードで興味深かったのが、アメリカの有料会員化しているメディアの話。

それらのメディアは、自社の有料会員向けに「トランプの政治は悪」だと訴えている。一方、トランプ政権の支持母体は、Facebookなど無料のプラットフォームでトランプの政治を称賛する記事を流しているという。・・・おそらく、次の選挙ではまたトランプは勝つだろう。

それらの有料化したメディアは何を目的としているのだろうか? そんな疑念を持ったという。

 

メディアでお金を稼ぐなら色んな方法があると思う。周りのライターさんを見ていて、書くこととを生業とすることと金銭的に裕福になりたいということの両立は、相当ハードルが高いと感じる。

なぜなら、読みたい人の数<書きたい人の数だからだ。需要<供給になると、供給側の対価は下がっていく。タダでも書きたい! という人がたくさんいるのだ。そして、前述したように書く場所も、SNSやウェブメディアやブログメディアの増大によって爆発的に増えている。

その前提を理解したうえで、

「あなたは、なぜ書きたいのか?」

を考えなければならない。

古田さんから投げられた問いに対して、僕もこの文章の中で考えてみた。

「あなたは、なぜ書きたいのか?」

僕が一番楽しい・嬉しいという感情が生まれるのは、好奇心の元に新たに学び・知ることだ。

「好奇心の元に何かを知る楽しさや喜びの体験を、同じように誰かに届けたい。」

それが、僕が書く理由だ。

 

・・・ようはお節介なのである。

 

企業のSNSやオウンドメディア、または商品の企画や営業戦略などマーケティングという業務を普段担当しているが、「その商品やサービスの価値を求めている人に届けて、適切な対価(市場評価)をもらうこと」を大切にして業務を行っている。

その企業活動を個人として体感することができるのが、事象やそれに対する心象について「書いて」「伝える」ことだと思う。

 

 

明日のライターゼミからの問いへの僕なりの考察

今回の古田さんのゼミでは、具体的な書くテクニックや、伝え方や広め方の手法論はなかった。

ただ、書くということを続けていくためには、「なぜ書きたいのか?」という問いへ、確固たる答えを持ちたいと思うし、自分が寄稿するメディアや自分の書き物にも、「何のために?」という存在目的を考えていきたいと思った。

西島さんがなぜこのような講師陣の方(いわゆる基礎的なライティング講師ではない)に登壇の依頼をしているのか? 僕なりに考えると、

「明日のライター」=「未来が明るいライター」

になるには、正しい文章を書けることは大切だが、

自ら書くことの目的をみつけ伝える為には何が最適か?を考えられる書き手であれ。というメッセージだと勝手に解釈している。

現役のライターさん、そして僕のように書くことに最近興味を持ち始めた方々には、

ぜひ、ご自身が書いているメディアや自分のブログに対して、

コンテンツ=どう作るか

ディストリビューション=どう届けるか

エンゲージメント=どう巻き込むか

そして「書く」ということへの問い、

何を書きたいんですか

どう書きたいんですか

誰に書きたいんですか

なぜ書きたいんですか

この古田さんから投げかけられた、2つの問いについて考えてみて欲しい。

そこから、明日のライターへの一歩が始まると思う。

ABOUTこの記事をかいた人

みる兄さん

コスメ系SNSの中の人、オウンドメディアもやりながら泥臭い経営戦略を担当。マーケティングやブランディングの面白さを実務とアカデミックの両面で切り取ってます。 MBA/さとなおラボ/企画メシ/明日のライターゼミ。淡々と熱量を書く人