「なんかいいよね禁止」谷山雅計さんが語る思考法。その続け方を考えてみた

早いもので明日のライターゼミ講義も全12回のうち9回目。

講師はコピーライター/クリエイティブディレクターの谷山雅計さん。

経歴をご紹介しますと、

コピーライター・クリエイティブディレクター 
1961年大阪府うまれ 
東京大学教養学部教養学科アメリカ科卒 
博報堂を経て1997年谷山広告を設立 

主な仕事
東洋水産「マルちゃん正麺」
資生堂「TSUBAKI」
東京ガス「ガス・パッ・チョ!」
新潮文庫「Yonda?」など 

主な著作
『広告コピーってこう書くんだ! 読本』
『広告コピーってこう書くんだ! 相談室』(宣伝会議刊)など 

コピー・CM企画・ネーミング・商品開発の分野で35年間一貫して仕事を続けている

明日のライターゼミ募集ページ「講師陣のプロフィール」より

日本を代表する広告クリエイターですね。

通常2時間の講義時間が今回は3時間。
ノンストップしゃべりっぱなし。
正直、圧倒されました。

講義冒頭から
「自分が教えられるのは広告コピーの書き方、コピーライターとしての考え方だから、ライターとは違うけれども・・・」とおっしゃっていましたが、まったくそんなことはない。

コピーライター・ライター関係なく、モノをつくる人間としての思考方法がつまった超実践的な講義でした。

講義内容をレビューするとともに、僭越ながら谷山さんの思考法をつづけていくにはどうしたらいいか? 僕なりに考えた方法もご紹介しますので最後までおつきあいください。

コピーとはなにか? 

コピーライター、コピーを書く、の「コピー」とはなんでしょうか? 

『広辞苑 第5版(岩波書店)』には、

広告文。宣伝文句。

コピーライターは

広告文を作る人。広告文案家。

とかかれています。

広告にのっかる文章や文句を考えられればいいのか? じゃあ、商品やサービスがステキにみえるようなかっこいい言葉や比喩をつかえばいいんじゃないか。

それが、大きな間違い。

谷山さんははっきりと定義されます。

コピーとは「描写」ではなく「解決」である。

今回の講義テーマは「コトバを広告にする方法」でした。

コトバを広告にする方法とは、単なる描写(コトバ)ではなく、解決(広告)の役割をもたせることであるということになるわけです。

事前に
「双眼鏡をもっと売るためのコピーを考えてください」という
課題がだされました。

僕たち受講生が提出したもの、谷山さんが以前やられた講義で提出されたものの中から
「解決」の視点があるコピーとはどのようなものなのか? 具体的に示されます。

  • 描写→「遠くまでよく見える」機能を言いかえているだけ
  • 解決→「遠くまでよく見える」機能が誰に何をもたらすかを提示している

また、すでに双眼鏡がつかわれている「バードウォッチング」「天体観測」などのシーンを示しただけでは、あたらしい人に興味をもってもらえない。

双眼鏡に関係なく生活している人に、自分に関係があるモノだと思わせることができるか。

そのコピーが「ある世界」「ない世界」で双眼鏡に対する見方が変わるかどうか。

それが「解決」につながる考え方なのです。

僕もそうですが、過去講義を思い出した受講生も多かったはず。

第1回講義で西島さんがおっしゃった

読む前と読んだ後で何かが変わっていないと存在価値はない
明日のライター講義レポート

第6回細田さんの講義テーマ

それ、言葉で解決しよう
明日のライター講義レポート

との共通点が随所にかんじられました。

伝えるべきモノ・コトの課題、価値をとらえて読み手に変化をもたらして解決する。
言葉を扱ってものを作るための根本にある大切な考え方ということです。

課題、僕はまったくダメでした。
「双眼鏡に対して最低限見出してほしい」と言われた2つの切り口に到達することもできませんでした。

しかも僕は谷山さんの講義を受けたのがはじめてではありません。
10年以上前の学生時代、宣伝会議コピーライター養成講座に通っていまして「古本屋のコピー」という課題に取り組みましたが、その時もダメだったんです・・・・。

今回の提出課題を振り返っても、見事に描写ばかり。

谷山さんは「何を書けたかよりも、何を書けなかったか」が重要、自分の思考の弱点を見つけ克服できるようにトレーニングをしていけばいいともおっしゃっていました。

僕の場合「自分の範囲」だけで考えてしまっていた。だから、とぼしい切り口の中で言い換えや(うまいと自分で思っているだけの)比喩にはしり「描写」ばかりになっていたのです。

では、どうすれば多様な切り口を発見できる思考力が身につくのでしょう?

谷山さんは言います。

「なんかいいよね」という言葉を禁止にしてほしい、と。

「なんかいいよね」禁止とは?

広告、映画、音楽、小説、絵画、なんでもいい。
見聞きして「いいよね」と思ったとき、どこがいいのか? なぜいいのか? を考えてみる。
いいものをつくる作者の思考プロセスを逆算してみる。

アスリートの例えが講義でも出ていましたが、僕はメジャーリーガーの大谷翔平を思い浮かべました。彼が高校1年生のときに作ったマンダラチャート。目標に必要な要素を分解して9×9のマス目に記入していくというものです。

大谷選手は野球選手としての目標に対して逆算をして実践していたのです。

コピーライターやライターなど、いい作り手を目指す僕らにとってはどうか。

自分がいいと感じた作者は、目標ともいえます。目標がどのような思考や工夫をもって作品をつくったのか。それを逆算して考えることで思考を鍛えるのです。

最初はうまくできないかもしれない、でも、それをつづけるしかいい作り手になる方法はないのではないかと谷山さんは言い切られていました。

とにかくしつこくつづけることが大切。

でも、なかなかつづけられません。
学生時代に同じことを聞いたはずの僕はできていなかったんです。

つづけるにはどうしたらいいんだろう?
自分なりにその方法を考えてみました。

「なんかいいよね」禁止をつづける方法

1.得意なジャンルをみつける

理想はあらゆるものに対して「なぜいいのか?」と考えつづけることですが、なかなかそうはいかない。でも、このジャンなら無理なくできるし、楽しいぞというものがあるはずです。それを探すのがいいと思います。まず手当たり次第のジャンルで「なぜいいのか?」を考える、調べる。そして、これは他のものとちがうかも? という手ごたえのあったものを重点的にやってみる。ひとつのジャンルでやり続けると「なぜいいのか?」を考える基礎ができて、ほかのジャンルでもできるようになるのではないでしょうか。

2.アウトプットしてみる

考えるだけより話したり、書いたりしてみる。手帳でも日記でもいい。ツイッターやブログ、noteなどにアップして発信するのもいい。書くことで思考が整理されますし、過去のものを見かえしたり、誰かから反応をもらえるとうれしくて習慣化しやすくなると思います。

いちばん簡単なのは、誰かに話してみることです。

谷山さんは先輩アートディレクターの例を出されていました。博報堂で一緒に働いていたころ、しょっちゅう谷山さんに「〇〇はなぜいいのだろうか?」というお話をされていたとのこと。話すと即座に反応が返ってきますし、話しているうちに考えがまとまってくることもあるので、信頼できる相手をみつけるのがいいでしょう。

この時大切なのは、「正しい・間違い」という目線はもたないこと。
思考のトレーニングですから、考えること、つづけること自体が重要なんです。

なぜ僕がこの2つのポイントに思いあたったかというと、映画評を通してこれをやっているなあと気づいたからです。

なぜいいのか? の積み重ねが映画評

2019年1月から街角のクリエイティブに映画評を書かせてもらっています。

僕にとっての映画評は「なぜいいいのか?」をとにかく積み上げていく感覚です。
なぜこの土地が舞台なのか? なぜこの2人は向かい合っているのか? 主人公の部屋になぜこのポスターが貼ってあるのか? など様々なことを考え、調べ書いていく。

たとえば、レディ・ガガ主演「アリー/スター誕生」について書いた記事

リメイク作品なのですが、過去作と主人公の名前が違う。
それは過去作の名前が、その由来から考えて描きたい女性像と違う。だから名前から監督が思い描く女性像にしたかったからじゃないか? 

すごく重要だと思われる人物について写真や回想がない。
それは見た人に想像し、考えてもらうことで感情移入してもらいたいからじゃないか? 

などなど。

監督や脚本家の意図と完全に合致しているかはわかりませんが、その思考や工夫の逆算は僕にとってとても楽しく、他のどんなジャンルより深く考えることができる。そして、それを誰かに伝えるためにアウトプットをつづけています。

もちろん、僕にとって映画がそうだったというだけです。

「なぜいいのか?」を意識しつづけると、自分にとって考えやすいジャンルがかならず見つかりますからぜひやってみてください。

今の思考が明日のライターへとつながる

ここは「明日のライターゼミ」だけど、僕はもう「昨日のライター」みたいなものだからねえ。
冗談めかしておっしゃった谷山さん。
しかし、その背中はあまりにも大きく遠くにありました。

「なぜいいのか?」を考えぬき、ロジックをかさねて、その先にあるアイデア・表現を信じてつきつめる。教えてもらったことを実践しつづけることでしか、いい作り手になる方法はない。

講義中の話し方やたくみな話術を落語のようだと僕は感じました。
後日、別の受講生から聞いたところによれば谷山さんは落語がお好きでよく聞かれているのだとか。きっとそこでも「なぜいいのか?」と絶えず考えて講義など人前で話すときに活かされているのだろうと思います。

どんなことからも学ぶことはあるはず。
今日の、この瞬間の思考が明日のライターになれるかどうかの分水嶺なのかもしれません。

これまでの総決算であり、大きな指針と目標をいただいた講義。
本当にありがとうございました。

ABOUTこの記事をかいた人

金子ゆうき

愛媛県在住の会社員時々ライター。新潟県にうまれ、東京での求人広告制作・コピーライター・販促プランナーを経て妻の地元愛媛県に移住。座右の銘は「ユーモアを忘れずに」