鈴木涼美さんから学ぶ。「炎上」を華麗に回避する秘訣

無難な文章を狙いすぎると面白味がなくなる。だが、攻めすぎた表現は誰かを不快にして「炎上」する可能性がある。

事実を並べたうえで、主張を入れたシニカルな面白味を出すべきだが、それを狙って書くのは非常に難しい。

……そんな悩みを常に持って、普段スマホやPCと向き合っている僕にとって、ピッタリの内容だったのが今回の鈴木涼美さんの明日のライターゼミだ。

【鈴木涼美さんプロフィール】

大学入学後に文章を書くことを学び始める。文芸家、福田和也さんのゼミにて毎週800文字を書き、レビューされる経験により文章の基礎を学ぶ。その後、東大大学院に進み、処女作「AV女優の社会学」の元となる論文を執筆。

卒業後は日経新聞に就職。都庁担当などを歴任し、6年目の途中で退社。現在に至る。

書籍は5冊執筆。

「AV女優」の社会学、青土社 (2012)

身体を売ったらサヨウナラ、幻冬舎文庫( 2016)

愛と子宮に花束を、幻冬舎(2017)

おじさんメモリアル、扶桑社(2017)

オンナの値段、講談社(2017)

……ゼミの冒頭でご紹介いただいたプロフィールだけで、相当パンチが効いている。

個人的な話を少しすると、僕が彼女を知ったのは、日経新聞退職後まもない2014年、週刊文集の記事で「日経新聞記者はAV女優だった!」という見出しの記事が話題を呼んだ時である。その後、その事実に対して淡々と考察している鈴木さんの「『日経記者はAV女優だった!』私が受けた文春砲の洗礼、鈴木涼美」という文章をWEB上で見かけた。

その後、自分の暴露記事を出した文春のWEBメディア「文春オンライン」に2017年から寄稿しているというのも、僕はステキだと思う。

昨年末から、映画評や今回のような登壇レポートを書かせていただいているのだが、ただの事実、事象を記述するだけでは、世間にお披露目する文章としての面白味は無い。しかし、偏った主張やいたずらに人を煽り話題を作ろうとする文章は絶対に避けたい。

常々、文章を書くときには、僕の頭の片隅には「炎上」という言葉がよぎる。

最近、さまざまな広告コピーや記事で企業やメディアが「炎上」している。今年だけでも、西武百貨店、パルコ、SPA、ドマーニと月に1本以上のペースで「炎上」が起きている。

ちなみに、SNS上ではよく使われる「炎上」の言葉の定義を調べると以下のように記されている。

炎上:別名、炎上騒ぎ,炎上騒動,ネット炎上【英】flaming

企業や著名人の言動が一般ユーザーの反感を買い、ウェブ上で集中的に批判や悪評が飛び交う騒ぎを指す語。問い合わせ窓口や公式Twitterアカウントに非難の声が殺到したり、悪評・風評が吹聴されたりして、騒動がさらなる騒動を呼ぶ形でウェブ上の話題を席巻する。

(バイナリIT用語辞典)

僕は、普段マーケティングの仕事をしているので、こういった「炎上」にまつわるニュースは他人事ではない。どの事象も、事前にネガティブチェック(対象者に事前に見せてマイナス要素を確認すること)を実施していれば防げたような気もするが、洪水のような情報の中で、埋没させないよう尖らせたいと考えると、賛否両論が起こる表現のまま世の中に出してしまうケースも多いのかもしれない。

実は、以前僕もボヤ程度だが自身のツイッターが「炎上」しかけたことがある。自分の発した言葉を局所的に切り取られ、そして曲解されたまま様々な人が否定的に言及していた。

その時から、ツイートをするときや文章を書くときには「この表現は誰かを傷づけていないか?」「この事象の捉え方は誤解を生まないか?」「エビデンス(証拠)は足りているか?」を一歩立ち止まって確認して、書くようにしている。

書き手のみる兄さんです

そんな「炎上」未遂な実体験がある中、今回の鈴木涼美さんのゼミの内容は、僕が求めている「炎上を回避しつつ、シニカルに面白味を出して書く」ためにはとても示唆深い内容だった。

 

 

そもそもコラムとは何か?

必要要素:「情報」「分析」「批評」

追加要素:「メディアへの配慮」「自己紹介」「独自性」

「炎上」云々の前に、僕らが書くことの多いコラムの定義について解説をいただいた。本題に入る前に、前提条件を登壇者と受講者でしっかり合わせることは大切だ。

コラムを書くときには、「情報」「分析」「批評」のバランスが大事である。鈴木さんは最近、WEBメディアにコラムを寄稿することが多いらしいが、目安となる文字数の中で、この3要素がどのくらいの割合を占めているかを考えながら書いているそうだ。

分析や批評に独自性があることも大切だが、独自の情報があると、それ自体が価値を生むケースが多い。テーマとなるニュースが自分の体験談として語れる。独自に入手した情報を持っている。分析や批評(主張)で独自性をだすのは難易度が高いが、情報を調べることに独自の価値を見出してコラムを書くというのは、誰でも取り入れられる手法である。

 

追加の要素として、「メディアへの配慮」というのも大切だ。(だったという方が、正しいかもしれない)

なぜなら、現在、記事がニュースアプリやプラットフォーム、SNSで広がるので、そのメディア自体の色を使って書くことは意味がなくなっている。

以前は、WEBメディアでも、「○○世代の△△な女性向けの……」というカテゴリーが色濃くあったが、今では女性週刊誌の記事と経済メディアの記事がニュースアプリ上で隣同士になることも多く、カテゴリーという概念はなくなってしまった。

書き手からすると、「攻めた表現だが、このメディアの読者にはOK」と意図して書いたとしても、「炎上」する可能性は非常に高くなっている。僕らが学生の頃、男子のバイブルと言われた”ホットドックプレス”でも「夏のナンパ特集」や「北方謙三の人生相談」など、かなり攻めたコンテンツがあったと記憶しているが、現代では捉え方によっては、リスクがある切り口なのかもしれない。

WEBメディアもテレビと同じように老若男女に届くようになった。誰が見ても不快にならないように、配慮しなければならない状況だ。それによって、当たり障りのない文章になってしまう可能性が強くある。だからこそ「炎上」を回避しつつ、鋭い視点のコラムを書ける書き手が重宝されていくのだと思う。

 

炎上を回避する5つのポイント

鈴木涼美さんがゼミの課題を用いて炎上回避のポイントをレクチャーしてくれた。

①情報の強さがある

②自虐や明確な自己分析、批評眼

③炎上事象の是非議論とは視点を変える

④批評(シニシズム)を入れる

⑤レトリックが効いた解決策を提示する

①情報の強さがある

よく勉強している。稀有な経験をしている。これが「炎上」を回避する一番のポイント。

不勉強だったり、情報が不足していていると、読み手が書き手に対して、

「お前が言うな!」と感じる。

こういう文章は「炎上」しやすい。ただ、情報量を沢山入れればよいというわけではなく、短い文章だが、「この人は良く調べているな」「自己体験から書いているなと読者に感じてもらえるように書かないとならない。

 

②自虐や明確な自己分析、批評眼

自分のことを棚に上げた文章は、「お前が言うな」という切り口で燃える。

言っていることとやっていることが違うと、読み手から揚げ足を取られやすい。過大に自分をみせるのではなく、等身大であることが読み手に共感を呼ぶ要素だ。多少なりとも、自虐的なエピソードを入れたりするのも時には必要。

 

③炎上事象の是非論とは視点を変える

起こった事象の是非論ではなく、視点を変えるメタ的な切り口で書く。

これは高度だが、炎上せずに炎上しているテーマを言及する方法だ。

鈴木涼美さんは、『週刊SPA!』(扶桑社)が掲載した「ヤレる女子大学生ランキング」をテーマに書いたゼミ生のコラムについて言及し、視点を変える手法を解説した。

そのコラムでは、抗議活動をしたICUの学生が、記事の撤回や謝罪ではなく、「編集部との対話」を求めていたことの意義を書いていた。

炎上事例に対して、「許す?」「許せない!」という是非論とは視点を変えて書くことで、一石を投じる書き方は非常に参考になる。

 

④批評(シニシズム)を入れる

直接切り取られても意味が分からないように、少し高度な皮肉を入れた文章を書く。

欧米はジョークや風刺画という文化がある。文脈にブラックコメディを入れる。というのが長い歴史を通じて文化として楽しまれている。ただ、皮肉を込めた文章を書くのは、日本人はあまり得意ではないと思う。背景まで含めてそのシニシズムがわかるように書くのは、歴史や深い知見が必要なので、素人が安易に踏み込むのは危険だと思う。ニュースを笑いに変えていくのは高度な技術が必要である。

※シニシズム:社会の風潮・事象などを冷笑すること

 

⑤レトリックが効いた解決策を提示する

炎上している主体に対して、(例えば)妄想をもとにした助言として書く。これはレトリックが効いた書き方だ。

上から目線で「こうすべきだった」という論調で書くと、火に油を注ぐ可能性や逆に揚げ足を取られてしまう。

これも④のポイントと同様に、素人が付け焼刃で踏み込むと火傷する技術である。

※レトリック:言葉を美しく巧みに用いて効果的に表現すること。また、その技術。

 

ここまで5つの視点で炎上しないためのポイントを教えてもらったが、この中でも誰しもが取り入れることが出来て、重要度が高いと思ったのが「情報の強度」という視点だ。冒頭の広告の「炎上」に関しても、同様のことを感じていた。

「炎上」が起きる多くの場合「情報の強度」が不足しているのに「言葉(文体)の強度」に頼り過ぎている。

そして、批評やレトリックを安易に使用し、対象者からすると全く笑えない文章として燃えてしまう。

その広告を届けたい人に対して、よく調べ、よく勉強していれば、たいていのケースでは回避できた可能性が高い。

 

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ちなみに、最後にこれを書くと「プチ炎上」する可能性も有るが、ここまで「炎上」を回避する書き方を学んてきたので、少しシニシズムを効かせた文章を書きたいと思う。

 

<「炎上」している時の思考法について>

「炎上している」=「下界が騒がしい」

「上から目線で炎上させている人に対して、その上を行く上から目線をすればよい」

と頭の置換をすれば良い。

……不特定多数から、意図せずに炎上させられている場合、その環境から早く離れて、「下界がさわがしいな~」くらい鋼のメンタルに強制的に切り替えることもSNS時代では必要だと鈴木涼美さんから伝授していただいた。

 

僕も、怒られていると

「あーこの人は、こんなことで怒るくらい度量が小さいひとなんだな」

「ストレス抱えて、対人関係辛そうだな」

怒る人⇔怒られる人の関係性から解脱する思考法を持っている。

この話をすると「非人間的」「反省しない男」「冷酷冷徹」というレッテルを張られたことがあるので、普段は自分だけの心にとめ、他言はしないようにしていたが、今回は鈴木涼美さんの「炎上しない力」を借りて、ツイッターや職場で演じている、善き父、良き旦那、良きビジネスマンという奇麗な殻を少し脱皮してみた。

最後にあまり面白くない自虐を入れてみたが、今後も「炎上」とは無縁な書き手でいたいと思う。

ABOUTこの記事をかいた人

みる兄さん

コスメ系SNSの中の人、オウンドメディアもやりながら泥臭い経営戦略を担当。マーケティングやブランディングの面白さを実務とアカデミックの両面で切り取ってます。 MBA/さとなおラボ/企画メシ/明日のライターゼミ。淡々と熱量を書く人