「届いてこそライターの仕事です」と夏生さえりは言う

各方面で活躍中のライターと編集者から、広告、ウェブ、紙のライティングと編集を学べる「明日のライターゼミ」。講師の一人、夏生さえりさんにごりごりインタビューしました。

西島
本日はよろしくお願いします。

 

さえり
こちらこそ、よろしくお願いします。

 

早速ですが年しゅ

 

 

言えません。

 

 

ですよね。では、どうしてこの講ぎ

 

 

西島さんに頼まれたからです。

 

 

ケーオツです。早速本題に入りましょう。

 

 

はい。

 

届けるためのSNSの使いかた

早速ですが、さえりさんの1期の講義を聞いて。さえりさんは自分が書いた記事をSNSでシェアすることをとても大切にされていて、シェアし終えるまでが「書くこと」だと考えられているような印象を受けました。

 

SNSでのシェアには、とても気を遣っています。

 

 

文言や添付する画像の配列まで意識されてるんですよね?

 

はい。シェア時の見え方を検証するアカウントも持っているので、そこで何度も「ベストなシェアの仕方」を試行錯誤しています。それをするか、しないかで、読んでもらえるかどうかが随分と変わると思っているので。ライターならば「記事を読んでもらう」までが仕事ではないかと思っているので、自分でできる限りのことはやりたいと考えています。

 

LINE@での告知もされると思いますが、ツイッターの時と違いなどありますか?

 

かなり違います。ツイッターは広く色々な人が見てくれているので、母数を広く取った言葉遣いにしたり、あと私のことを知らない人に届く可能性があるので、文章だけで興味を持ってもらえるように書いています。LINE@は、わざわざ登録してくれている人へ向けてなので私を知っている前提で。またLINEに届くので親近感というのを意識して「みんな元気?」みたいな語りかけから入りますね。あと、記事を書く時こう思ったとか裏話的なものはLINE@では好まれるのですが、ツイッターで知らない人が見た時は「誰、お前?」となりかねないので、あまり書かないようにしています。

 

SNSで絶対にやらないようにしていることはありますか?

 

あおりですかね(笑)。炎上はさせたくないので、あおったり、過剰な意見は言わないようにしています。「はっきり言わないとつまらない」という人もいて賛否両論あると思うのですが、私は炎上させずに広く届ける方法がないかなと思ってます。そのためにも「やらないこと」は結構決めているほうだと思います。妄想ツイートでいうと、キスまでしかない、とか。

 

記事を書くとき

記事を書く上で、気をつけていることはありますか?

 

テクニック的なことは色々あるのですが「読まれるシチュエーション」を特に気をつけていますね。

 

どこで読まれるか、ということですか?

 

 

はい。こういう文章はこういう場所で読んで欲しいから、短い文章で区切って改行を多くしようとか、こういう文章はたぶん寝る前に読むだろうから、しっとりめの長い文章で、エモい表現をたくさん入れようとか、読んでいるシーンを想像しながら書く、ということを意識しています。

 

読者の属性は、例えば10代向けのファッション感度が高い人が読んでいるメディアがあったとして、そこを想定するのか、さえりさんのファンが20万人くらいいると思いますが、メディアの属性関係なくそこを想定するのか、と言われたらどちらなんでしょうか?

 

複合的な感じですけど、起爆剤としてファンの人たちがいるので、その人たちからの広がりを意識しています。メディアの属性を意識しすぎると、広がっていかないことがあるので。

 

ファンを起点に考える方が成功確率が上がるんですね。

 

ファンの人たちを思い浮かべないまま書いてしまうと、結果的に誰にも届かないということがあります。ただ、あくまでファンを意識しつつも、企画を立てる段階で、メディアのターゲットに合わせて企画を調整したり、SNSでシェアする時間を調整したりしています。

 

そうすると、40代のちょいワルオヤジが読むメディアみたいな所から話がきたら、どうなりますか?

 

そこまでかけ離れているとお断りすると思います。私が書いても意味がないだろうと思うので。

 

無理やり接点は作ったりしませんか? 例えば40代のちょいワルだったら無理して彼女目線や、娘目線でアプローチしたりとか。

 

接点を作れそうで、企画を出した時クライアントさんの趣旨とも合いそうだったら良いかもしれませんが、無理やり接点を作ることで趣旨がズレていくようだったら断りますね。以前「うちの会社の採用を増やしたいので、妄想でうちの会社を紹介してくれませんか?」という依頼があったのですが、いいけど、いいんですか? みたいな(笑)。でも、効果がないことを続けていると、企業にとっても、ライターにとっても良くないなと思います。

 

さえりさんは、課題があった方が書けるタイプですか?

 

アーティスト系かどうか、ということですか?

 

 

そうです。

 

 

課題があったり、読む人がいて「こういう人に届けるぞ」と思わないと書き続けられないです。内側から溢れ出る「自分の表現したい何か」だけで走れるほうではないですね。誰に届けたくて、その人たちがどんな気持ちになりたいのかを言ってくれない限り「なにを書けばいいんだろう」と思っちゃいます。

 

では、広告記事を書く時、コラム系の記事と比べて気をつけている点などありますか?

 

その記事を、どれくらい不快感なく最後まで読んでもらえるかというのは意識しています。最初に広告と明かした方がいいのか、明かさないで、一番最後に出した方がいいのか、そこはライターならみんな悩むと思いますが、商品によって、企画によって、どの辺に広告感を出せば最後まで読んでもらえて、商品に興味を持ってもらえるか。そこを企画の段階で一番考えるのかもしれないですね。書くよりも。

 

広告記事のコンバージョンに関してはどう考えていますか?

 

ウェブの記事で実際に行動まで促すというのはすごくハードルが高いと思うので、私は仕事をする時、事前に「私ができるのは、基本的には認知の所までです」とお話するようにしています。「モノが売れる」とか「ダウンロードされる」という所まで期待されないように。もちろんそうなるようにこちらは努力をしますが、数値のお約束はできないですね。

 

確かに発注する側は「ライターさんに広告記事をお願いするとモノが売れる」と思っている場合が多いかもしれませんね。

 

そう思われている方がすごく多いので、その辺は最初にお話します。そこを期待されて「結果が出ないじゃん」と後で言われると、どちらにとっても不幸なので。

 

ライターになりたての頃と今、ライティングに対して認識が変わった所とかありますか?

 

この仕事は「届ける」というのが一番重要なので、書いたものをちゃんと人に届けられないといけないと思うようなりましたね。そう考えるようになってからフォロワーも増やしたいと思えましたし、SNSも「届けられるシェアの仕方になっているか」を考えるようになりました。

 

さえりさんは以前、編集側の立場でもお仕事されていらっしゃいましたけど、編集側の視点でライターの良い働き方などあれば教えて頂けますか?

 

編集をやっている時、すごく反応の早いライターさんがいて、お願いしたらすぐにやってくれるし、急な修正対応でも全部やってくれるんですけど、そういう人たちに負担がかかりすぎてしまうのが困りものだなと思っていました。編集からすると助かってたんですが、それをやっていたら身が持たないんじゃないかと心配にもなって。「メールは即レスしなきゃダメ」とか「必ず即対応できるライターじゃないと仕事はしたくない」という文化もすごく理解できるんですが、私は力を抜いて長く息ができないかと思っています。

 

確かに自分に対してストイックすぎると、どこかで破綻してしまうかもしれませんね。

 

会社員の時は、会社にいる時間にちゃんとやればいいので、それはもう即レスでもなんでもできたと思うのですが、今の立場だといつまでも仕事をしなきゃいけなくなったり、逃れられない感じになっちゃうので、私は名刺に電話番号も書かないし、教えないようにしています。

 

やりやすい編集者って

ウェブでも書籍でもいいのですが、やりやすい編集者ってどういう方ですか?

 

ちゃんと締切があって、それを口うるさく言ってくれる人ですかね。本当にダメな性格で申し訳ないのですが、管理されないとどこまでもできないので・・・。ちゃんと言ってくれるとありがたいです。

 

毎日「あと7日」「あと6日」とカウントダウンしていけば良いですか?

 

それは嫌です(笑)。でも、楽しみにしてくれているんだなと思えると「書くぞ」という気になりますね。ウェブの記事って、一瞬で流れ去っていきますよね。それを繰り返しているとなにかが消耗していくような感覚になる時もあるんですが・・・。その中でも、モチベーションを保ってくれる編集者がいると本当に助けられます。いつも丁寧なコメントをくれる編集者がいて「この一文、すごくグッと来ました」とか「この語尾が全体を緩めてくれた感じがします」とか、細かいフィードバックがあるんです。褒めてくれるだけじゃなくて、赤もしっかり入っているし。そういう人に「次も楽しみにしてます」と言われると、書くのが楽しみになりますね。

 

夏生さえりのこれから

さえりさんは、広告のコピーも、作詞も、映像の原案もやられているじゃないですか。ジャンルは違えど、どれも書く仕事で、それぞれ頭の使い方が違ったりしますか?

 

今仕事でショートアニメの脚本をやっているのですが、難しいですね。映像になった時にどこを差し引きしたらいいか。ウェブの記事を書く時は「本を読まない人でもわかるように」というのを意識しているのですが、それを映像でやると説明的になってしまったり、本にすると情緒がなさすぎたりして。書く仕事でもこんなに違うものか、と発見がありました。

 

私もコピーライターとして仕事を始めて、そのあと映像も作るようになって気がついたのが、ライターって、全部説明しようとしがちなんですよ。絵で伝えられるのに、セリフとして言わせちゃったり、書いちゃうんですよ。書くことによって、意味が限定されちゃうから、例えば女の子が泣いたとして、泣いた理由を言っちゃ駄目じゃないですか。それを言わないことで見た人の数だけ解釈が変わる。それが映像の良さだったりするのに、何故だか書かないと心配になる。定義できないことは嫌なのかも。

 

私もまさにそこで苦戦しています。どこかは言わないとわからないので、どこを引いて成り立たせるのかを考えるのが難しいなと。ウェブはありとあらゆる人が触れられるようになっている分、ちゃんと説明して、ちゃんと言及しておかないと誤解を招くことがあって。普段から本当にあらゆる角度から誤読を防ぐような書き方をしているので、それに慣れてしまっているのかもしれませんね。

 

さえりさんの場合は、ライターとして、どこまで書く仕事から離れるかというのもありますよね。

 

確かに、VALUとかタイムバンクとか、ああいうものをするかどうかとかというのはあるかもしれないですね。

 

やらないんですか?

 

 

現状は、できるだけ書く人のイメージでいたいのでやっていません。

 

 

さえりさんが「私の時価総額が100億になりました」とか言ってたら少し引いちゃいます(笑)

 

そうですね(笑)。

 

 

テレビとかはどうですか?

 

 

今のところ話ももらっていないのですが、私として取り上げてもらったりするのはすごく嬉しいのですが、コメンテーターとかはしちゃ駄目だろうなと思っています。それこそ何か強く言わなきゃいけなかったりとか、みんなの代表みたいにしゃべらなきゃいけなかったりとか。守ってきたスタンスが崩れてしまうので。

 

不倫とかのコメントを求められちゃいますもんね。

 

今のところは、何をしている人かわかるように、書くものからはあまりそれないようにと思っているのですが、ちょっとずつ広げていけたら嬉しいです。

 

さえりさんのツイート内容や記事内容っていずれ変わっていくんですかね? 今は妄想ツイートや、恋愛したい! という内容が多いですが・・・。

 

そうですね。結婚願望なしなら問題ないですが、わたしのように結婚願望有りの人が、「こういう恋愛したい!(けどできない)」と5年、10年と書き続けているとちょっと悲壮感が出てしまうかもですよね・・・。正直に言えば、さすがに今のキャラをずっと続けるのは難しいかなと思っています。

 

結婚して40代になったら離婚の妄想とかしちゃったり。

 

具体的なやつ(笑)。現実になりすぎちゃって生々しいと。

 

 

「夫が一日も帰ってこなくて毎月100万振り込まれないかな」とか(笑)。

 

具体的すぎます(笑)。でも、近くに人がいると書きづらくなりますよね。当てはまる人がいると書きづらいな。

 

結婚して、子供ができて読者と一緒に成長していく的なことはあるんですかね?

 

それは一つの理想の形ですよね。まだまだ自分のキャラクターに関しては探っているところです。でも少しでも、読んでいる人がハッピーになればいいなとはいつも思っています。

 

2期へ向けて

最後になりましたが、2期の「広く届けるWebライティング講座」への意気込みがあればお聞かせ下さい!

 

私は、キャリアがなくても今ライターとしてやっているので、最低限ここまでやれば読める記事になる、という話ができるといいのかなと思っています。「最初に引きを持ってくることが重要」など、ウェブライターとして読まれる記事を作るコツをお伝えできると嬉しいです。

 

本日はありがとうございました。

 

 

こちらこそ、ありがとうございました。

 

編集後記

風が吹いた。爽やかな、ミントのフレーヴァーのする風が・・・。

いきなりどうしちゃったのかと思われただろうが、どうもしちゃってはいない。こんな言葉を書きたくなるくらい、さえりさんはいつも清々しいほど爽やかで、何かに責任を押しつけたりする発言が皆無な、ハーブティーのような、うまく言えないが、そんな感じの存在感のあるライターなのだ。

しかしながら。しかしながら、とても強い芯を持っている。自分ができないことはハッキリと口にし、自分がやるべきではないことを見極め、やらない。

だからこそ、ライターとして唯一の存在に今、なれているのだと思う。

同じライターとして、「午後の紅茶」を愛飲しているライターとして、ハーブティーライターさえりさんの、今後の飛躍を見続けたいと思う。

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